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恐多
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おそれおお
「恐れ……
恐多い事——
承りまするも恐多い。
陪臣の
分を
仕つて、御先祖様お名をかたります如き、
血反吐を
吐いて即死をします。」
武士の
一分相立ち申さず、お上へ対し
恐多い事とは存じながら、かく
狼藉いたし候段、重々恐入り
奉ります、此の上は無実の罪に
伏したる友之助をお助け下され
いや
最う、
何も
彼も御存じで、
婆なぞが
兎や
角ういふも
恐多いやうな
御人品ぢや、さやうならば行つてござらつせえまし。
蜀紅の
錦と言う、
天蓋も広くかかって、
真黒き
御髪の
宝釵の玉一つをも
遮らない、
御面影の
妙なること、
御目ざしの美しさ、……申さんは
恐多い。
神職
秘しがくしに秘め置くべき、この
呪詛の
形代を(藁人形を示す)言わば
軽々しう身につけおったは——別に、
恐多い
神木に打込んだのが、森の中にまだ
他にもあるからじゃろ。
(とろりと酔える目に、あなたに、
階なるお沢の姿を見る。
慌しくまうつむけに
平伏す)ははッ、
大権現様、御免なされ下さりませ、御免なされ下さりませ。
霊験な
御姿に対し
恐多い。