恐多おそれおお)” の例文
「恐れ……恐多おそれおおい事——うけたまわりまするも恐多い。陪臣ばいしんぶんつかまつつて、御先祖様お名をかたります如き、血反吐ちへどいて即死をします。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
武士の一分いちぶん相立ち申さず、お上へ対し恐多おそれおおい事とは存じながら、かく狼藉ろうぜきいたし候段、重々恐入りたてまつります、此の上は無実の罪にふくしたる友之助をお助け下され
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いやう、なにも御存じで、ばばなぞがういふも恐多おそれおおいやうな御人品ごじんぴんぢや、さやうならば行つてござらつせえまし。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
蜀紅しょくこうにしきと言う、天蓋てんがいも広くかかって、真黒まくろ御髪みぐし宝釵ほうさいの玉一つをもさえぎらない、御面影おんおもかげたえなること、御目おんまなざしの美しさ、……申さんは恐多おそれおおい。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神職 しがくしに秘め置くべき、この呪詛のろい形代かたしろを(藁人形を示す)言わば軽々かるがるしう身につけおったは——別に、恐多おそれおお神木しんぼくに打込んだのが、森の中にまだほかにもあるからじゃろ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(とろりと酔える目に、あなたに、きざはしなるお沢の姿を見る。あわただしくまうつむけに平伏ひれふす)ははッ、大権現だいごんげん様、御免なされ下さりませ、御免なされ下さりませ。霊験あらたか御姿おすがたに対し恐多おそれおおい。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)