思返おもひかへ)” の例文
たとへられぬほどうらめしく思はれるに反して、蘿月らげつ伯父をぢさんの事がなんとなく取縋とりすがつて見たいやうになつかしく思返おもひかへされた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
と、思返おもひかへしたものゝ、猶且やはり失望しつばうかれこゝろ愈〻いよ/\つのつて、かれおもはずりやう格子かうしとらへ、力儘ちからまかせに搖動ゆすぶつたが、堅固けんご格子かうしはミチリとのおとぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
銭勘定ぜにかんぢやうの事よりも記憶に散在してゐる古人こじんの句をばじつうまいものだと思返おもひかへすのであつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
芸者なんぞになつちやいけないと引止ひきとめたい。長吉ちやうきちは無理にも引止ひきとめねばならぬと決心したが、すぐそばから、自分はおいとに対しては到底たうていそれだけの威力ゐりよくのない事を思返おもひかへした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
道子みちこ客商売きやくしやうばいをしてゐた小岩こいは生活せいくわつのむかしを思返おもひかへしてふてくされる始末しまつ
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)