御寵愛ごちょうあい)” の例文
御寵愛ごちょうあいの「ファラリース」というアラビヤ産を種馬として南佐久へお貸し付けになりますと、人気が立ったの立たないのじゃありません。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「奥向ばっかじゃないな、御領内の女房狩りでは、百姓の女房でもなんでも御寵愛ごちょうあいなさるそうだげな、前中納言様が……」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうでしょう、きっと、そうに違いない。ふだんの御寵愛ごちょうあいがふかいだけに、こういう折こそと、事ごとに、辛く当たられる私たちです。私も、何度も、唇を
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三十余年間、臣ポローニヤスのみならず、家族の者まで、御寵愛ごちょうあい御庇護ごひごを得てまいりました。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
今宵は江戸名物の、青山百人町ひゃくにんちょう星灯ほしとうろう御上覧のため、将軍家が御寵愛ごちょうあいのお光の方共々お成りとあって、界隈かいわいはいつもの静けさにも似ず、人々の往き来ににぎわっていた。
織田どのもひどく御寵愛ごちょうあいで、ゆくゆくは御息女を嫁にお遣わしなさるお約束だということです
蒲生鶴千代 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
身も世も要らぬとまで思い込んだ女子おなごは、かず多くありましょうが、この浪路は、日本六十余州を、おんあずかり申される、将軍家の、限りない御寵愛ごちょうあいを、草履ぞうりのように打ち捨てて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
しかもこの御姫様は御気象も並々ならず御闊達ごかったつでいらっしゃいましたから、なまじいな殿上人などは、思召しにかなう所か、すぐに本性ほんしょう御見透おみとおしになって、とんと御寵愛ごちょうあいの猫も同様
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたくしはともかく、あなた様は八つからお身近くつかえて、人一倍御寵愛ごちょうあいうけたお気に入りで厶ります。親とも思うて我まませい、とまでお殿様が仰せあった程のそなた様で厶ります。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
大げさに申しますれば、浦島太郎うらしまたろう乙姫様おとひめさま御寵愛ごちょうあいを受けたという龍宮りゅうぐう世界、あれでございますわ、今から考えますと、その時分の私は、本当に浦島太郎の様に幸福だったのでございますわ。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
重畳ちょうじょうの幸福と人のうらやむにも似ず、何故か始終浮立ぬようにおくらしなさるのに不審をうつものさえ多く、それのみか、御寵愛ごちょうあいを重ねられる殿にさえろくろく笑顔をお作りなさるのを見上た人もないとか
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
「先殿様に、それほど御寵愛ごちょうあいを受けておりながら、その若様を、そんなにまで破滅に導いた、その有力な指導者は、つまり、あのお絹様じゃあがあせんか」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「左京之介様には御息女がなかった。御寵愛ごちょうあいの女なら、まさかここへはおくまい。誰だろう、あの女性にょしょうは?」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんでも御寵愛ごちょうあいつぼねが姫を産んだので、将軍家はひじょうによろこばれ、それを
その辺の魂胆こんたんはまだ貴様にはわかるまい、わかってもらう必要もないのだが、貴様の今に始めぬ色師自慢から思いついたのは、酒井左衛門尉の御寵愛ごちょうあいこうむった尤物ゆうぶつ
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
白河の上皇さまに御寵愛ごちょうあいをうけたことは、かくれもないにせよ、八坂やさかの僧を忍びとしていたなどと、もう二十年もむかしの古事ふるごとを、いったい、たれがいい出したのでしょう。
まことに相済みません、あなた様は御先代の神尾主膳様御寵愛ごちょうあいのお部屋様、とはいえ、金銭は別物でございますから、たとえ、どなた様に致せ、抵当が無くて、金銭を
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
御存じでしょう、松の丸殿というのは太閤秀吉の御寵愛ごちょうあいの美人の一人なのです。あの人は、或る城主の妻でありましたが、それがとりことなって秀吉の御寵愛を受ける身になったのです。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それと思い合わすれば、このごろお邸のうちにうわさのないことではありません。殿様がお君さんを御寵愛ごちょうあいになる……という噂が誰言うとなく、口から耳、耳から口へとささやかれているのであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お殿様の御寵愛ごちょうあいを一身に集めてしまいました、わたしのお殿様は世間のお殿様のような浮気ごころで、わたしを御寵愛あそばすのではありません、奥方様よりもわたしを可愛がって下さるのです。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)