彌増いやま)” の例文
新字:弥増
愛欲之中アイヨクシチユウ。……窈窈冥冥ヤウヤウミヤウミヤウ別離久長ベチリクチヤウつて學舍でG師に教はつて切れ/″\にそらんじてゐる經文が聞えると、心の騷擾さうぜう彌増いやました。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
そゝぐ涙に哀れをめても、飽くまで世を背に見たる我子の決心、左衞門いまは夢とも上氣とも思はれず、いとしと思ふほど彌増いやまにくさ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
見る時は不便心が彌増いやまほどこすことのすきなる故まうけの無も道理ことわりなり依て六右衞門も心配なしいつそ我弟が渡世とせい先買さきがひとなりはぢ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
扨も世を無常と觀じては斯かる侘しき住居も、大梵高臺の樂みに換へらるゝものよと思へば、あるじの貴さも彌増いやまして、今宵こよひの我身やゝはづかしく覺ゆ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
つく探索たづねしかど更に樣子のしれざりしに今六右衞門の物語りにて久八こそは彼の時にすてたる我が子に相違さうゐなしと心の中に分明わかりゆゑしきりに不便ふびん彌増いやまして只管ひたすらいのち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其の御心の強さに、彌増いやます思ひに堪へ難き重景さま、世に時めく身にて、霜枯しもがれ夜毎よごとに只一人、憂身うきみをやつさるゝも戀なればこそ、横笛樣、御身おんみはそを哀れとはおぼさずか。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)