ごう)” の例文
さすがは奥地第一の雄藩に禄をむ若侍だけあって、どうやらこの道の相当ごうの者らしいのです。と見えたのはしかし四本目までのことでした。
「そうじて泣く子と地頭にゃ勝たれんわな。水戸の烈公さんなんて、あれでなかなかごうものでいらっしゃったるそうな」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
阿仏は為相に一家を立てさせただけに、ごうの者であったが、また老年の為家をよくたすけてその道にも精しかったのである。名言をのこしている。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
はい/\さア大夫此方こちらへ、さて私は先刻此処へ休んだ者で、処が此方こなたのお嬢様がごう□に遇おうという処をうやって計らずもこうお助け申すというも何ぞの縁で
それら五、六人の者はみなお粂にも深い馴染がある日本左衛門一まきと称されるなかのごうの者で
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれぞ総大将成吉思汗ジンギスカンの弟、合撒児カッサルでござります。武芸並ぶ者なく、ことに、強弓衆に優れ、矢面に立つもの必ず額を射抜かれると申すこと。人々彼を怖れて、うわばみ綽名あだないたすごうの者です。
「また手数てすうをかけるそうでございますね、顔ににあわないごうつくばりですね」
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
但し平田は柔道三段のごうの者で、「グヅグヅすれば打ん殴るぞ」と云ふやうな、腕ツ節を誇示する風があつたので、此方が大人しく出るのは卑怯ぢやないかとも考へられたが、———さうして事実
(新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その時はお蔦の機知さそくで、柔ごうを制することを得たのだから、いつもなら、いや、女房は持つべきものだ、と差対さしむかいで祝杯を挙げかねないのが、冴えない顔をしながら、湯は込んでいたか、と聞いて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)