たひらか)” の例文
愛讀の書物の金文字がきら/\輝く。野に積つた雪のやう。たひらかに皺一つない幾帖かの原稿紙のおもてに、小さな唐獅子の文鎭が鮮な影を描いてゐる。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
われは辛うして虫などのはふがごと行くに、常はたひらかなる方も、壁崩れて土など高うなりて歩み苦し。しばしありて囲に来ぬ。せうとの君、娘など共にゐたり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それが其頃大阪に居た慶喜公の耳に聞えた。そこで公は心おほいたひらかならず、更に薩長彈劾の奏をたてまつる、さアそんな事を聞くと江戸でもじツとしては居られない。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
此石山の川岸にさしかゝれる所にめづらしき石あり、其かた磨磐ひきうすの如く、上下たひらかにしてめぐりは三角四角五角八角等にして、石工いしやの切立し如く、色は青黒し。是を掘出したるあともありてほらのごとし。
この乱流の間によこたはりて高さ二丈に余り、そのいただきたひらかひろがりて、ゆたかに百人を立たしむべき大磐石だいばんじやく、風雨に歳経としふはだへ死灰しかいの色を成して、うろこも添はず、毛も生ひざれど、かたち可恐おそろしげにうづくまりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
されど我心は遂に全くたひらかなること能はざりき。
此石山の川岸にさしかゝれる所にめづらしき石あり、其かた磨磐ひきうすの如く、上下たひらかにしてめぐりは三角四角五角八角等にして、石工いしやの切立し如く、色は青黒し。是を掘出したるあともありてほらのごとし。