干物ほしもの)” の例文
室内に張られた紐には簡單着の類が亂雜に掛けられ(島民は衣類をしまはないで、ありつたけだらしなく干物ほしもののやうに引掛けておく)
それより、干物ほしものがどうなつてるかみといで。みんな風で飛んぢまつてるから……。(女中、そつととま子の耳元で何か囁かうとする)
医術の進歩 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
金は入りません難儀を救うは人間の当然あたりまえで、私は何も欲しい物は有りませんが、富川町へ引越ひきこしてから家内が干物ほしものをする処が無いに困ってる
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
堀割の水は青く搖すれ、御堂みだうの色硝子は金に耀き、ストゥウルといふ石造の張出に干物ほしものは乾き、屋根の上には緑の唐華草からはなさう
ハルレム (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
そして、すぐ八八角成、同銀、三三角、二一飛成、八八角成、バタバタとまるで夕立に干物ほしものをとりこむ慌たゞしさ。名人茶碗をとりあげて一口のんで
散る日本 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
ろくな植込みも燈籠とうろうもなく、下女のお民が、陽を追つて干物ほしものを持ち廻るらしく、三又さんまたと物干竿ざをとが轉がり、物干の柱が突つ立つて居るだけの殺風景さです。
さながら、「雨は降る降る干物ほしものは濡れる、背中じゃ餓鬼ゃ泣く飯ゃげる」というていたらくです。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いゝえ、階下した干物ほしもの取入れてゐた。あんたこそ野呂さんの洋服たゝんでゐたのやないのんか。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
干物ほしものは屋根でする、板葺いたぶき平屋造ひらやづくりで、お辻の家は、其真中そのまんなか、泉水のあるところから、二間梯子にけんばしごを懸けてあるので、悪戯いたずらをするなら小児こどもでも上下あがりおりは自由な位、干物に不思議はないが、待て
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
空は陰って来る、雷は鳴って来る、母の顔色はだんだん悪くなって来る。わたくしもかねて心得ていますから、蚊帳かやを吊る。お線香の支度をする。それから裏の空き地へ出て干物ほしものを片づける。
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
津田は洗濯屋の干物ほしものを眺めながら、昨日きのうの問答をこんな風に、それからそれへと手元へ手繰たぐり寄せて点検した。すると吉川夫人は見舞に来てくれそうでもあった。また来てくれそうにもなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「これ、日が暮れかかったのに、干物ほしものを入れねえか」
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
室内に張られたひもには簡単着の類が乱雑に掛けられ(島民は衣類をしまわないで、ありったけだらしなく干物ほしもののように引掛けておく)
取込み忘れた干物ほしものかも知れず、雨に驚いて飛込んだ、小鳥だったかも知れないのです。
家々ではあわてて雨戸をしめる、干物ほしものを片付ける。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「前掛を取ると、口の中に生じめりの干物ほしものが一パイ詰めてありました」
「前掛を取ると、口の中に生じめりの干物ほしものが一パイ詰めてありました」