干柿ほしがき)” の例文
いったい蛮土ばんどの物は濃厚のうこうで、日本の物は淡味たんみです。菓子でも、干柿ほしがきもちの甘味で、十分舌に足りていたものが、砂糖に馴れると、もうそれでは堪能たんのうしなくなります
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家でも正月だけは集まってこれを食べたと見えて、干柿ほしがきかや搗栗かちぐりというような、今はお菓子といわない昔の菓子が、三方折敷さんぼうおしきの上に鏡餅かがみもちと共にかならず積みあげられる。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
小説家なぞになるものでない、と云って聞かして、干柿ほしがきを三つくれて帰えす。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
大阪の天王寺かぶら、函館の赤蕪あかかぶら、秋田のはたはた魚、土佐のザボン及びかん類、越後えちごさけ粕漬かすづけ足柄あしがら唐黍とうきび餅、五十鈴いすず川の沙魚はぜ、山形ののし梅、青森の林檎羊羹りんごようかん越中えっちゅう干柿ほしがき、伊予の柚柑ゆずかん備前びぜんの沙魚
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
親仁おやじ両提ふたつさげよりもふらふらして干柿ほしがきのようにからびた小さなじじい
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
干柿ほしがきは一つ十銭と聞きつつもけふの一日ひとひに三つ食ひけり
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
干柿ほしがきの吊るしてある軒下だの、暗い馬小屋の横からだの、わらわらと人が駈けて出た。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉はもったいないような顔をして、しかし、祝酒ならよかろうと、小姓に銚子ちょうしを命じ、三宝に盛って出された昆布こんぶ勝栗かちぐり美濃みの干柿ほしがきなどのうちから、柿一つ取って自分も喰べ、恵瓊にも
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日に、小麦の団子だんご少しと、野菜揚げと、干柿ほしがき二、三個。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)