せん)” の例文
渋江保さんの語るを聞けば、抽斎は客を饗する時、毎に料理店百せんの安と云ふ男を雇つたさうである。彼は貴族的で、此は平民的であつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
その結果、利を獲たものは、実に、呉でもなく魏でもなく、いまや蜀漢二せんの地を占めている玄徳ではありますまいか。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
腰切りの漁衣ぎょい、はだけた胸。その大胸毛は珍しくないが、石盤のような一枚肋骨あばらは、四せんの絶壁を思わすに充分である。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この一せん灌漑かんがいとしていた川下数十ヵ村の田や畑も、すべて枯死を呈しかけていた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せんのすえに青々とすんだ浪華なにわの海には、山陰さんいん山陽さんよう東山とうさんの国々から、寄進きしん巨材きょざい大石たいせきをつみこんでくる大名だいみょうの千ごくぶねが、おのおの舳先へさき紋所もんどころはたをたてならべ、満帆まんぱんに風をはらんで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
流木のはやさを見てもわかるとおり、一夜にして出現したこの人工の泥湖は、いまなお刻々水嵩みずかさを増している。足守川あしもりがわ長良川ながらがわの二せんを合したものが、どうどうと注ぎ込まれているのである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生死せいしせん
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)