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川向
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かはむか
其もお
値段によりけり……
川向うに二三
軒ある
空屋なぞは、
一寸お
紙幣が
一束ぐらゐな
處で
手に
入る、と
云つて
居た。
貧しい
本所の一
区が
此処に
尽きて
板橋のかゝつた
川向うには
野草に
蔽はれた
土手を越して、
亀井戸村の
畠と
木立とが美しい田園の
春景色をひろげて見せた。
蘿月は踏み
止つて
遠みちも
夜寒になりぬ
川向う
初卯の
日、
母様が
腰元を二人
連れて、
市の
卯辰の
方の
天神様へお
参ンなすつて、
晩方帰つて
居らつしやつた、ちやうど
川向ふの、いま
猿の
居る
処で