嵌込はめこ)” の例文
Cはやはり木の箱で、前面は硝子を嵌込はめこんであり、下のEなる皿には水を入れ、図で見るように電熱で所要の温度に保つのである。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
就中なかんずく椿岳が常住起居した四畳半の壁に嵌込はめこんだ化粧窓けしょうまど蛙股かえるまたの古材を両断して合掌に組合わしたのを外框わくとした火燈型で
黒柿の床柱と、座敷の欄間に嵌込はめこんだ麻の葉つなぎの桟のある障子の細工の細かさは、村人の目をそば立たせた。
草川巡査は手に持った板片の釘痕くぎあとを合わせて、スッポリと元の板戸の穴へ嵌込はめこみながら、なおも微笑を深くした。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私の見たものでは角絵つのえがあります、それは水牛の角をうすくセルロイドの如くして道釈人物、雲鶴等が描かれてあるのです、そして、扉へ嵌込はめこまれてあります
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
ひのきの板を削って、すげる深さだけそこを削って嵌込はめこにかわでつけて、小刀の柄がピッタリついて取れないようにすげ、それを上手うまく削って父なら父流の柄の形にこしらえ
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
つまり嵌込はめこみ細工で、——軸の下のほうを振ると、その中から、細く筒に巻いた紙が出て来た。
それがこの広座敷の主人あるじのようで、月影がぱらぱらとうろこのごとくを落ちた、広縁の敷居際に相対した旅僧の姿などは、硝子がらす障子に嵌込はめこんだ、歌留多かるたの絵かと疑わるる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実は獅子ししの生きている右眼が嵌込はめこんであるというところから、その物語は二百頁も続く。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
あれなる壁の面にレンズが一つ嵌込はめこまれてありますが、蝋燭の火があのレンズの中心を通過する高さにまで燃え縮まってきますと、蝋燭の火はレンズを透してその後にある鏡に焦点を結び
障子の嵌込はめこみガラスの向うに、異様な物の姿を認めて、思わず立止った。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
支那シナのものでも、例えば厨子ずしの扉へあるいは飾箱のふた嵌込はめこまれたりあるいは鏡の裏へあるいは胸飾りとして、あるいは各種の器具へ嵌込まれたものが多いのであります、その絵としての価値も
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
机に向かって箱をあけると、これも例の如く、筆が五本、わくはまって並んでいる。甲斐はまん中にある斑入ふいりの軸の筆を取り、静かに指でひねって、嵌込はめこみ細工になっているその軸の上部を抜いた。
象の下ッ腹の窪みにキッチリ嵌込はめこむようになって死んでいる。
ふなばたへ、かたかたと何やら嵌込はめこむ……
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)