居並いなら)” の例文
旧字:居竝
『ええ只今ただいま足下そっか御関係ごかんけいのある事柄ことがらで、申上もうしあげたいとおもうのですが。』と、市役所員しやくしょいん居並いなら人々ひとびと挨拶あいさつむとこうした。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
舞殿ぶでん東側ひがしわきの一段高い席に、頼朝と政子まさこ居並いならんで彼女を見た。夫妻は、物珍しいものでも見るように、静のしとやかな礼儀を見まもっていた。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはひどく雪の降った日のことであったという。座には早川千吉郎、益田なにがし、その他錚々そうそうの顔触れが居並いならんでいた。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
さてこそと天にも昇る心地ここちにて、控所に伴われ行きしに、典獄署長ら居並いならびて、つつしんで大赦文たいしゃぶんを読み聞かされたり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
そのうちに最前喰べたお菓子連中が、めいめい赤や青や紫や黄色や又は金銀の着物を着て、男や女の役者姿になって大勢居並いならんでいるのがはっきりと見えました。
お菓子の大舞踏会 (新字新仮名) / 夢野久作海若藍平(著)
昔は十万石以上の大名がこの殿上に居並いならび、十万石以下の大名は外なる廻廊に参列して礼拝らいはいの式をなした。
霊廟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
式場の正面の、白い布でおおうたテーブルの上には免状やら賞品やらが高く積み上げられている。左右には白襟しろえりもんつきの子供の母達や教師たちがつつましやかに居並いならんでいる。
「しなが鳥」は猪名いなにつづく枕詞で、しなが鳥即ち鳰鳥におどりが、居並いならぶのとが同音であるから、猪名の枕詞になった。猪名野は摂津、今の豊能川辺両郡にわたった、猪名川流域の平野である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
やん事なき方々と居並いならぶ御身分とおなりなさったのだそうです。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)