尽瘁じんすい)” の例文
小石川こいしかわ竹早町たけはやちょうなる同人社どうにんしゃの講師としてすこぶ尽瘁じんすいする所ありしに、不幸にして校主敬宇けいう先生の遠逝えんせいい閉校のむなき有様となりたるなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
徳川のそんする限りは一日にてもそのつかうるところに忠ならんことをつとめ、鞠躬きっきゅう尽瘁じんすいついに身を以てこれにじゅんじたるものなり。
自身の尽瘁じんすいと価値の上にゲラゲラ笑いのつばをとびちらしているとしたら、それは忍びがたい光景ではないだろうか。
政治と作家の現実 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その先代のビーチャム・ビルという人は、薬で儲けた巨万の富を投げ出して、英国楽壇のために尽瘁じんすいした人である。
兄としては高松のすべてをあげて水戸家に尽瘁じんすいしたいであろうに、自分は枝藩二家と共に、かえって内政関渉の役目にさえついている。すべてが逆だった。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ああはたして仁なりや、しかも一人のかれが残忍苛酷かこくにして、じょすべき老車夫を懲罰し、あわれむべき母と子を厳責したりし尽瘁じんすいを、讃歎さんたんするもの無きはいかん。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
病後の身をてこれに当らんはいとくるしかりけるを、尽瘁じんすいして万端を処理しつつ、ひたすら直道の帰京を待てり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
何故なれば女子が新しき時代の教育者たる時は彼等は最大なる社会的職務のために尽瘁じんすいしてゐるからである。
恋愛と道徳 (新字旧仮名) / エレン・ケイ(著)
それから助手というのは一人は山本広、一人は卯山飛達うやまとびたつといって、ともに博士の手足となって数年来この事業のために尽瘁じんすいしているという、至極忠実なる人々だ。
月世界跋渉記 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
ある者は茶器の世界に耽溺たんできする。ある者は欧風の讃美に尽瘁じんすいする。ある者は科学的工夫に傾倒する。ある者は技巧をこれ美とし、ある者は刺戟しげきをこれ表現とする。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
怪賊黄金仮面の逮捕に尽瘁じんすいしていた関係上、賊の恨みを受け、恐ろしい脅迫状を送られたこともあるが、最近は賊の目に見えぬ攻撃が烈しくなったので、同氏は用心深く
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
身をささげて尽瘁じんすいし、みずから自分の身を疲憊ひはいさし、四方から自分自身を焼きつくし、樹脂の炬火たいまつのようにしばらくのうちに燃えつくしているが、彼の友もその一人だった。
義に厚く情にもろい。坂東武者の典型でもあろうよ。ただ不幸にして順逆じゅんぎゃくの道を誤り、今こそ朝家に弓引いておるが、一旦の恩に志をひるがえし、皇家無二の忠臣として、尽瘁じんすいせぬとも限られぬ。
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
営々として育英事業に尽瘁じんすいすることここに三十有余年
村のひと騒ぎ (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
されどいまだ「ホーム」を形造かたちづくるべき境遇ならねば、父母兄弟けいていにその意志を語りて、他日の参考に供し、自分らはひたすら国家のために尽瘁じんすいせん事を誓いおりしに
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
日本の勤労的な生活にある婦人層の広汎な政治的成長のために尽瘁じんすいしつづけた。
女性の歴史の七十四年 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
偶々たまたま案内に来られた朴衡鎮君が計らずもかつて柳の講義を聴き、その著書を愛読されているのを知って、その奇遇に驚かされた。朴君はかつて大邱において農村の副業に尽瘁じんすいしたという。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)