小糠こぬか)” の例文
毎日毎日、気がくさくさするような霖雨ながあめが、灰色の空からまるで小糠こぬかのように降りめている梅雨時つゆどきの夜明けでした。
(新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
小糠こぬかのような雨が生暖かいむんむんするような春の気を部屋一杯に垂れ込めて、甘酸っぱい梔子くちなしの匂いが雨に打たれて、むせぶように家の中じゅうに拡がっていた。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
見ると、奉公人の私でさへ齋痒はがゆいと思ひます。丁子屋家付きの娘で、旦那は小糠こぬか三合の入聟ですもの、あんなに小さくなつて居なくたつて宜いやうなものですが——
その時の、魂の上に落ちた陰翳いんえいを私は何時までも拭ふことが出来ない。私は家のものに隠れて手拭につゝんだ小糠こぬかで顔をこすり出した。下女の美顔水を盗んで顔にすりこんだ。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
「どうしてれだけ使つかれるもんけえ」と勘次かんじはいつた。おしな勘次かんじ梯子はしごけてひとつ/\に大根だいこはずすのも小糠こぬかむしろはかるのもしろしほ小糠こぬかぜるのも滿足氣まんぞくげた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
内部にはきねの音がし、小糠こぬかのにおいがこめ、男女の声がしていた。支那の戦車のような形の船であった。これらは流れの瀬の替わるにつれて、昨日はしも、明日はかみへとのぼるのである。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
小糠こぬかごうということがある。して西引佐切っての早川家の息子だ。
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
一人産むとすっかり変ってしまった、二人の友達のほうも似たりよったりです、結婚するまえはしとやかに楚々そそとしていて、それが祝言してしまえばがらっと変るんですからね、小糠こぬか三合持ったらという俗言は決して誇張じゃありませんよ
末っ子 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小夜中は五重の塔のはしばしに影澄みにけり小糠こぬか星屑ほしくづ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
小夜中は五重の塔のはしばしに影澄みにけり小糠こぬか星屑ほしくづ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
女童めわらべしじき入る寒き夜を小糠こぬか小星こぼしも風に冱えにき
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
女童めわらべしじき入る寒き夜を小糠こぬか小星こぼしも風に冱えにき
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)