小夜嵐さよあらし)” の例文
見よや、一座の山の上に、火焔を浴びた城一つ、落城と見えて女子供の泣き叫ぶ声の物凄く、その間も吹きつのる小夜嵐さよあらし
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今しがたまで見えた隣家の前栽せんざいも、蒼然そうぜんたる夜色にぬすまれて、そよ吹く小夜嵐さよあらしに立樹の所在ありかを知るほどのくらさ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ただときどき家を鳴らして渡る小夜嵐さよあらしが、遠くの潮騒しおざいのように余韻を引いて過ぎるばかり。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
火鉢ひばちくろりてはいそと轉々ころ/\すさまじく、まだ如月きさらぎ小夜嵐さよあらしひきまどの明放あけばなしよりりてことえがたし、いかなるゆゑともおもはれぬに洋燈らんぷ取出とりいだしてつく/″\と思案しあんるれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小夜嵐さよあらしとぼそ落ちては堂の月 信徳しんとく
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ッ——と一わたり、小夜嵐さよあらし屋棟むねを鳴らして過ぎる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)