寝返ねがえ)” の例文
旧字:寢返
いて寝返ねがえりを右に打とうとした余と、枕元の金盥かなだらいに鮮血を認めた余とは、一分いちぶすきもなく連続しているとのみ信じていた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むかしんだ小説しょうせつには、やはりそんなすじのものがあったことをおもして、おとうさんは、じっとしてまくらにあたまをつけていられなかったのでした。たびたび、寝返ねがえりをなさったとき
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)
老婦人は、一つ寝返ねがえりをうちました。そのときに両眼りょうがんを天井の方に大きく開きました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わが寝返ねがえる音に、ふとこなたを見返り、それとうなずさまにて、片手をふちにかけつつ片足を立ててたらいのそとにいだせる時、と音して、からすよりは小さき鳥の真白ましろきがひらひらと舞ひおりて
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うめいて、寝返ねがえりを打った。悪夢でもみているように。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寝返ねがえりを打って入口を見ると、因果の相手のその銀杏返しが敷居の上に立って青磁せいじはちを盆に乗せたままたたずんでいる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
万事を明日あすに譲る覚悟をきめた彼は、幾度いくたびかそれを招き寄せようとして失敗しくじったあげく、右を向いたり、左を下にしたり、ただ寝返ねがえりの数を重ねるだけであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
寝返ねがえりをして、声の響いた方を見ると、山の出鼻を回って、雑木ぞうきの間から、一人の男があらわれた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)