実方さねかた)” の例文
姫やわかの顔、女房にょうぼうののしる声、京極きょうごく屋形やかたの庭の景色、天竺てんじく早利即利兄弟そうりそくりきょうだい震旦しんたん一行阿闍梨いちぎょうあじゃり、本朝の実方さねかた朝臣あそん、——とても一々数えてはいられぬ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
東国の出羽でわ陸奥むつもその伝で二つに分れたと聞いている、昔、実方さねかた中将が、奥州へ流され、この国の名所、阿古屋あこやの松を見ようと尋ね歩いたが見つからなかった。
笠島のこおりに入ると、実方さねかた中将の遺跡、道祖神の祠をたずねなければ、奥州路の手形が不渡りになる。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宮城野みやぎのの萩、末の松山まつやまの松、実方さねかた中将の墓にうる片葉のすすき野田のだ玉川たまがわよし名取なとりのたで、この五種を軸としたもので、今では一年の産額十万円に達していると云う。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかも著述でも世にのこそうという人に、忠実なる旅行家が不幸にしてなかったのである。藤原実方さねかたが歌枕を見て参れと奥州へやられた事実は非常に悲しむべき不幸と考えられた。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
実方さねかた長櫃ながびつ通る夏野かな 蕪村
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
実方さねかた長櫃ながびつ通る夏野かな
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
業平なりひら朝臣あそん実方さねかたの朝臣、——皆大同小異ではないか? ああ云う都人もおれのように、あずま陸奥みちのくくだった事は、思いのほか楽しい旅だったかも知れぬ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
実方さねかた長櫃ながびつ通る夏野かな
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
こうなっては凡夫も同じではないか? あの実方さねかたの中将は、この神の前を通られる時、下馬げばはいもされなかったばかりに、とうとう蹴殺けころされておしまいなすった。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)