とき)” の例文
その時は六月の末で、例年いつもならば投身者の多いときであるのに、どうしたのか飛び込む人がなかった。老婆は毎晩娘と枕を並べながら、聞き耳を立てていた。
身投げ救助業 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
碧く晴れた空にときならぬときに色づいた此処の柿だけが、風鈴の赤い硝子玉のやうにくつきりと浮んでゐた。
蔭ひなた (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
かくて早くも五台山の夏から秋の四、五ヵ月も過ぎ、ときは紅葉の燃ゆる晩秋の頃となった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにもうときも過ぎてゐるし、確かに名物に何とやらの折紙ではあつたが
そもそも波羅葦増の国と申すは、四時花咲き、鳥歌ひ、果実ときなく実り、生あれども死なく、明あれども暗なく、悔なく、迷なく、苦なく、禍なく、白象鰐魚びやくざうがくぎよも人に戯れ、河水甘露の味を宿して
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
蟻群の甘きにつくがごとく、投網とあみの口をしめるように、手に手に銀磨き自慢の十手をひらめかして、つめるかと見れば浮き立ち、退しりぞくと思わせてつけ入り……朱総しゅぶさ紫総しぶさときならぬ花と咲かせて。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
とき時節じせつの心付けを貰つて、水商賣の用心棒を兼ねてゐたのもあつたのですから、お秀は親分の平次に頼んで、ガラツ八を用心棒に雇ひきり、晦日みそかにでもなつたら、二朱か一分も包んでやらうといつた
野にあればときのうつりのしづかなり霜は明らかに人はすなほさ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
唐棣花色はねずいろよき若立わかだちも、ときことごとくしめあへず
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
糸のすり切れたヴィオロンをきかせるときだ…
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
ときなつなか
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
野にあればときのうつりのしづかなり霜は明らかに人はすなほさ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
唐棣花はねずいろよき若立わかだちも、ときことごとくしめあへず
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
ときは夏なか
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
玄土くろつちのなじまぬ土の畑つものとき遲れたり白南風しらばえを而も
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
玄土くろつちのなじまぬ土の畑つものとき遅れたり白南風しらばえを而も
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)