媒妁人なこうど)” の例文
若様にはお覚違おぼえちがいでござります。彼等夥間なかまに結納と申すは、親々が縁を結び、媒妁人なこうどの手をもち、婚約の祝儀、目録を贈りますでござります。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云い、甚藏は縁切でもなんでも金さえ取ればいゝ、と話が付き、ず作右衞門が媒妁人なこうどで、十一月三日に婚礼致しました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
母はその媒妁人なこうどと自分の代理者とそれから出迎えの者を十数人(貧富によって多少の差あり)嫁の家まで迎えに遣るです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
お元は下谷したや媒妁人なこうどの家に一旦おちついて、そこで江戸風の嫁入り支度をして、とどこおりなく加賀屋へ乗り込んだ。
半七捕物帳:37 松茸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
媒妁人なこうどがなくてはならぬというので、誰に頼むかということになったが、私とて、まだこれという友人も出来ない時分、誰に頼んだものかと考えましたが
媒妁人なこうどというのも戸村が世話になる人である、是非やりたい是非往ってくれということになった。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
頑固かたくなな三吉が家を解散すると言出すまでには、離縁の手続、妻を引渡す方法、媒妁人なこうどに言って聞かせる理由、お雪の荷物の取片付、それから家を壊した後の生活のことまでも想像してみたので
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お媒妁人なこうどはどなた様にお頼みあそばしますおつもりでございますな」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
遂に京都で大寺だいじの住職となり、鴻の巣の若江は旅籠屋はたごやを親族に相続させ、あらためて渡邊祖五郎が媒妁人なこうどで、梅三郎と夫婦になり、お竹も重役へ嫁入りました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
のちにまたあらためて、歴然れっきとした媒妁人なこうど立てる。その媒妁人やったら、この席でこないな串戯わやくは言えやへん。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
媒妁人なこうどが迎えに来てその翌日すぐ嫁入りするというのはごくごく貧しい交際のない家の事です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
まず媒妁人なこうどの七蔵をよび起して、今夜の首尾を確かめようと、彼女は更に次の間の障子をあけると、酔い潰れた七蔵は蚊帳から片足を出して蟒蛇うわばみのような大鼾おおいびきをかいていた。
半七捕物帳:14 山祝いの夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
斎藤との縁談を断わったのが、なぜ面目ないのか、私は斎藤から頼まれて媒妁人なこうどとなったのだから、この縁談は実はまとめたかった。それでも当の本人がいやだというなら、もうそれまでの話だ。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「洒落たことをお云いでない。おまえさんは誰を媒妁人なこうどに頼んで、いつの幾日に家のお金を女房に貰ったんだ。神明様の手洗い水で顔でも洗っておいでよ。ほんとうに馬鹿々々しい。」
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何卒どうか跡に嫁を欲しいと思うが、お前の妹お藤が相当な縁だというので真堀の定蓮寺の海禪和尚かいぜんおしょうが橋渡しをして媒妁人なこうどを立てて貰い度いという、向うは急ぐからお前に相談しようと思うが
こういう奇態な習慣があるものですから、媒妁人なこうどらは充分注意してなるべく酒を飲まないようにする。けれどもまた花嫁の朋友とか親族とかいうものは巧みに勧めて酒を飲ませようと掛る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「安心しな、姉さん、心に罪があっても大事はない。私が許す、小山由之助だ、大審院の判事が許して、その証拠に、ぬすみをしたいと思ったお前と一所になろう。婆さん、媒妁人なこうどは頼んだよ。」
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
武田の重二郎が当家へ養子に来てくれる様にうから話はして置いたが、ようやく今日話が調とゝのったからお母様と相談して、善は急げで結納の取交とりかわせをしたいが、媒妁人なこうどは高橋をもってする積りで
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
処へ、名にし負う道学者と来て、天下この位信用すべき媒妁人なこうどは少いから、えつも隔てなく口を利いてうままとめる。従うて諸家の閨門けいもんに出入すること頻繁にして時々厭らしい! と云う風説うわさを聞く。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その媒妁人なこうどはかの三浦老人夫婦であった。
半七捕物帳:37 松茸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すなわち東山作左衞門が媒妁人なこうどで夫婦になり親子睦ましく暮して居ります、東山のつい地面内へ少しばかりの家を貰って住んで、農業を致し、親子の者が東山のお蔭で今日では豊かに暮して居ります
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
媒妁人なこうどは宵の口、燈火ともしびを中に、酒井とさしむかいの坂田礼之進。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして媒妁人なこうどをして下さい。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)