あま)” の例文
「とめ婆の話では、鶴子は崖下の素人屋しもたやにいる花という縫子おはりにいつもしみじみ身上話をしていたといったナ。……ひとつそのあまを叩いて見るか」
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「それにしても、あまはあの死骸を何うしたであらう。村では、あの娘つ子の手に其死骸のある中は、寺には決して葬らせぬと言つて居つたが……」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
そんな大事な水を、あんなあまの——父親のわからねえ餓鬼を二人もなしたやうな娘のために使つて堪るもんか。
旱天実景 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
めえさん此の薬をあまの口んなけっぺし込んで……半分噛んで飲ませろよ、なに間がわりい……横着野郎め
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この穀屋の後家さんが関で、それに続いちゃ、あの嘉助があまのお蘭さんだなあ。あのお蘭さんなら、イヤなおばさんのあとはつげらあ、後生こうせいおそるべしだなあ。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
難かしいこたあない、あまさい無事なら可いんでしょう。そこは心得てまさ、義作が心得たといっちゃあ、馬に引摺ひきずられたからとあって御信仰が薄いでしょうが、滝大明神が心得てついてます。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お待ちなせえ……そんな義理立ぎりだてえして無闇に往ったっていけねえ、二人で出て来たものが、一人置いておめえさんが往ったらあまくねえ訳だア、く相談してくが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「左様です。どうか御存分に。……もっとも俺ぁあまッ子は苦手だから、後はどうかそちらで」
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「時に、市場でも難儀が降って湧いてのう、あのあま、まだ身性みじょうがわからんかいのう」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
高があま一人、それを捕へる事が出来ぬとは、余り馬鹿/\しくつて話にも何にもらない様だが、それを知つて御覧なされ、それは実に驚いたもので、今其処に居たかと思ふと
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
『どうだオイ、そんなあまが可哀相かよ。』
旱天実景 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
お立派なお侍さんがんなきたねえ処へお出でなすったくれえだから、どうか此のあまを可愛がって下せえまし、折角此処こゝまで連れて逃げて来たものを、若い内には有りうちの事だ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちゃんと世間並みの鳥目ちょうもくを払って、小豆と、お頭附きと、椎茸しいたけ干瓢かんぴょうの類を買って行かれた清らかなあまじゃげな——払ったお鳥目も、あとで木の葉にもなんにもなりゃせなんだがな
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あまッ子というものはほんとうにがんぜないもので、こうなるとこわがってよりつかず、いま、あなたがいられまする土間にひっこもってぼんやり窓からそとばかりながめるようになりました。
海豹島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「孫右衛門どんのかきねの処の阪で、寝反つたまゝ何うしても起きねえだ。おらあ何うかして起すべい思つて、孫右衛門さんとこへ頼みに行つただが、ちひせあまばかりで、何うする事も為得しえねえだ」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
『さうか、あのあまが、また!』
旱天実景 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)