おなご)” の例文
「——俺も若い頃にゃあ、どんなおなごにもまけなかったが、こうなっては死ぬばかりだなあ——針のめど通すに縫うほどかかるごんだ」
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「……ア……アノ蔵元屋くらもとやどんの墓所はかしょの中で……シ……島田に結うた、赤い振袖のおなごが……胴中どうなかから……離れ離れに…ナ……なって……」
天竺のみ仏は、おなごは、助からぬものじゃと、説かれ説かれして来たがえ、其果てに、おなごでも救う道が開かれた。其を説いたのが、法華経じゃと言うげな。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
生徒たちは先生を呼ぶのに名をいわず、男先生、おなご先生といった。年よりの男先生が恩給おんきゅうをたのしみにこしをすえているのと反対に、女先生のほうは、一年かせいぜい二年すると転任てんにんした。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
あれは先妻のたたりじゃ、わしうらみを報いるつもりであったろうが、わしを恐れて、平三郎の命をとったのじゃ、舟の傍へ浮きあがった女は、宵に平三郎が手討てうちにしようとしたおなごだと云うたが
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「それは誠にすみまへんが、何誰どなたがおいでやしても、おらんさかいにと、いやはれと、おいやしたさかい、おかくしもうし、たんだすさかい、ごめんやす、あんたはんはおなごはんじゃ、さかい、おこりはりゃ、しまへんじゃろ」
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「あいも勝気過ぎって、不幸なおなごでな」
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
おなごほど詰らんもんおへんな、ちょっとええ目させてもろたとおもたら十九年の辛棒や。阿呆あほらし! なんぼぜぜくれはってももう御免どす」
高台寺 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
まだまだ恐ろしいインチキの天才ばっかりが今の赤には生き残っとるばんたん。そんげなおなごをば養うくかぎり、今にとんでもない目に会うば……アンタ……
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「父上、父上、昨夜ゆうべおなごが、おなごが浮きました」
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あのの背中を流す女中衆おなごしゅさんから聞き出したことで……私は、いつも其家此家そこここおなごたちの文使いをして遣りまするで、蔵元屋の女中さんも、詳しゅう話いて聞かせました上に
あのおなごは先妻であったよ
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)