塩釜しおがま)” の例文
どう見たって、塩釜しおがまさまの杓子面しゃもじづら安産札あんざんまもりじゃねえが、面のまんなかに字が書いてねえのが不思議なくらいだ。
塩釜しおがまから船で出ました。清く澄んだ海水を通して、海のの浮かび流れるのが見えるほど、よく晴れ渡った秋の日でした。なるほど、あそこにも島、ここにも島。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
河の氷がようやく崩れはじめ、大洋の果てに薄紫の濛靄もやけぶるころ、銀子はよその家の三四人と、廻船問屋かいせんどんや筋の旦那衆だんなしゅうにつれられて、塩釜しおがま参詣さんけいしたことがあった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
なかでも浜千鳥が砂浜に足跡をつけてあそぶ鳴海潟なるみがた、富士山の噴煙、浮島が原、清見が関、大磯小磯の浦々、紫草の美しく咲く武蔵野の原、塩釜しおがまの海の穏やかな朝景色
四里ほどの道をぶらぶら歩いて塩釜しおがまに着いた頃には、日も既に西に傾き、秋風が急につめたく身にしみて、へんに心細くなって来たので、松島見物は明日という事にして
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
猫の話で思い出したが、わしは明治四十二年の春、塩釜しおがまの宿で牡蠣かきを食った時から菜食さいしょくした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
塩釜しおがまから小さな汽船に乗って美しい女学生の一行と乗合せたが、土用波にひどく揺られてへとへとに酔ってしまって、仙台で買って来たチョコレートをすっかり吐いてしまった。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
雪の側はいわゆる御花畑で、塩釜しおがま白山一華はくさんいちげ小岩鏡こいわかがみなどが多い。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
名にし負う塩釜しおがま神社に近く、右手の沖は、鮎川のながれを受ける金華山きんかざん
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あやしともはなはだ異し! く往きて、疾くかへらんと、にはかひきゐくるまに乗りて、白倉山しらくらやまふもと塩釜しおがま高尾塚たかおづか離室はなれむろ甘湯沢あまゆざわ兄弟滝あにおととのたき玉簾瀬たまだれのせ小太郎淵こたろうがぶちみちほとりに高きは寺山てらやま、低きに人家の在る処
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
河原左大臣源融みなもとのとおるは、毎月二十石の潮水を尼ヶ崎から運搬させ、その六条の邸にたたえ、陸奥の塩釜しおがまの景をうつして、都のたおやめを、潮汲しおくみの海女あまに擬し、驕奢の随一を誇ったというが、忠平には
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
塩釜しおがまよりはいい。」とその友は容喙まぜかえせり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
からからとからき浮世うきよ塩釜しおがま
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)