ニハ)” の例文
で、此歌垣のニハの問答が、才能頓智を主とする様になつて来た。此が、段々と変つて来て、こゝに短歌の形が分れて来る。
万葉集の解題 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
其は真の抒情詩ではないが、抒情味の豊かなものとなつて、地方々々へ伝播された。そして、歌垣のニハで作られる民謡に、非常な影響を与へた。
万葉集の解題 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
此が次第につづまつて行つて、神人問答の唱和相聞カケアヒの短詩形を固定させて来た。久しい年月は、歌垣のニハを中心にして、さうした短いうたを育てた。
烏羅と言ひ、阿礼幡と言ひ、他に見えぬ語であるが、此処の阿礼も、射礼のニハに神をぎ下した古風と見られよう。
幣束から旗さし物へ (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
歌垣のニハで、相手を凌駕しようとする、誇張した性欲に根ざしたものであつた。此が性欲詩より、恋愛詩へ歩む途中に出来た、祭りの場合の即興詩である。
万葉集の解題 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
興台産霊コトヾムスビの字面がよくことゞの義を示してゐる。ことゞふは、かけあひの詞を挑みかける義で、嬥歌会カヾヒニハなどに言ふのは、覆奏を促す呪言の形式を見せて居る。
ことほぎの芸能化したのは、古いことであつて、我々には何時と定めることは出来ないが、其古い頃から既に採桑老でない仮面をつけてイハひのニハに現れたのである。
片哥や、相聞の類の、歌垣のニハに発生した唱和・贈答の発想法は、いろ/\に分化して行つた。
此冬祭りの日に、彼等は里へ降つて、鎮魂タマフリをしました。山姥が、山姥の舞を舞ひ、山人が、山の神に扮して舞うたのです。其ニハがいちと言はれました。「市」の古義です。
其山姥及び山人の出て来る鎮魂のニハが、いちと言はれるので、我が国の「市」の古義なのです。
翁の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
シロの幣束なる幣が、神の依りタヽニハシルシとなり、次いでは、人或は神自身が、神占有の物と定めたシメともなり、又更に、神の象徴とさへ考へられる様になつたのである。
幣束から旗さし物へ (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
二皇子の場合も、うけひの神事と、猟りの矢倉とを兼ねた物らしい。山・塚・旗・桙などの外に、今一種神ぎのニハとして、かう言ふ台に似た物を作つたことがあつたのだらう。
桟敷の古い形 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
大空より天降アモる神が、目的メドと定めた木に憑りゐるのが、たゝるである。即、示現して居られるのである。神のタヽり木・タヽりのニハは、人あい戒めて、近づいて神の咎めを蒙るのを避けた。
幣束から旗さし物へ (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
標山に乗つて一旦天降アモりのニハに帰られ、其処より天馳アマカケり給ふものと言はねばならぬ。
髯籠の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
従つてうけひのニハで当人の誦する詞が、うたと言ふ語の出発点といふ事になる。
まきもくの穴師アナシの山びとも、空想の仙人や、山賤ヤマガツではなく、正真正銘山カヅラして祭りのニハに臨んだ謂はゞ今の世の山男の先祖に当る人々をしたのだ、と柳田国男先生の言はれたのは、動かない。
妣が国へ・常世へ (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
大皇の勅 頭に戴きし功績イサヲあらはせ。戦ひのニハ
橘曙覧 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
大皇の勅 頭に戴きし功績イサヲあらはせ。戦ひのニハ
橘曙覧評伝 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)