うずだか)” の例文
松の皮でもこうかさなり重りしてうずだかいのを見るとね、あんまり難有ありがたいもんじゃあない、景色の可い樹立こだちでも、あんまり茂ると物凄ものすごいさ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さあ、いらっしゃい。お話をいたしましょう。」よしは台所の板の間におとなしくすわって、弟を円くうずだかひざの上に招き寄せる。声は清くほがらかである。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
田山白雲は、二人の人格を信ずるけれども、お松が書きつつあったうずだかい原稿紙に向って、むらむらと一種の敵意のようなものの湧くのを禁ずることができませんでした。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼の眼の前二三尺の所にうずだかひだを盛り上げて重々しくひろがっていた裲襠うちかけすそが、厚い地質の擦れ合うごわ/\した音を立てたのは、夫人が驚きを制しながら心持身を退しさったのであった。
ほとんどその半身をおおうまで、うずだかい草の葉活々いきいきとして冷たそうに露をこぼさぬ浅翠あさみどりの中に、萌葱もえぎあか、薄黄色、幻のような早咲の秋草が、色も鮮麗あざやかに映って
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
片手で自分の膝の前にうずだかくなっている場金ばがねを掻き集めながら
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「それで、」と言懸けて、衣兜かくしうずだかく、挟んでおく、手巾ハンケチの白いので口のあたりをちょいといた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
卓子の上にはうずだかく何枚もの罫紙けいしが積まれている。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
碧水金砂へきすいきんさ、昼のおもむきとは違って、霊山りょうぜんさき突端とっぱな小坪こつぼの浜でおしまわした遠浅とおあさは、暗黒の色を帯び、伊豆の七島も見ゆるという蒼海原あおうなばらは、ささにごりにごって、はてなくおっかぶさったようにうずだかい水面は
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)