しふ)” の例文
二千人以上の殉教者と三万数千人の被刑者とを出して尚しふねく余炎をあげてゐた切支丹騒動なるものは一段落ついた様に見えた。
のみならず「調べ」にのみしふするのは俳諧の本道を失したものである。芭蕉の「調べ」を後にせよと云つたのはこの間の消息を語るものであらう。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
豊雄すこし三四七心を収めて、かくげんなる法師だも祈り得ず、しふねく我をまとふものから、三四八天地あめつちのあひだにあらんかぎりは三四九探し得られなん。
しかしこの夢はその後、幾度も/\彼の眠りに現はれて、しふねくも彼を悩まし続けて行くのであつた。
(新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
氏上もな、身がしふ心で、兄公殿を太宰府へ追ひまくつて、後に据らうとするのだと言ふ奴があるといの——。やつぱり「奴はやつこどち」だなあ。さう思ふよ。時に女姪めひの姫だが——。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
夕立は、しふねく残つてゐる暑気を脅かさうとでもするやう、と襲つて来て、慌しく去つて行つた。あらゆる物は甦つたやうに生々とした色となつた。雨を含んだ風は、そよそよと何時までも吹いた。
秋の第一日 (新字旧仮名) / 窪田空穂(著)
しほからきしふよ………み空には星ぞうまるる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
禁制きんぜい外法げほふの者としふねくもののしせま
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あらゆる詩人の虚栄心は言明すると否とを問はず、後代に残ることにしふしてゐる。いや、「あらゆる詩人の虚栄心は」ではない。「彼等の詩を発表した、あらゆる詩人の虚栄心は」
父母、太郎夫婦、此の恐ろしかりつる事を聞きて、いよよ豊雄があやまちならぬをあはれみ、かつは妖怪もののけしふねきを恐れける。かくて三〇一やむをにてあらするにこそ。妻むかへさせんとてはかりける。
ひびかふはのろはしきしふよく、ゆめもふくらに
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しふふかきちからは、やをら
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
かくまでしふねきを、よく慎み給はずば、おそらくは命を失ひ給ふべしといふに、人々いよよ恐れ惑ひつつ、翁をあがまへて、二八五遠津神とほつがみにこそと拝みあへり。翁打ちみて、おのれは神にもあらず。
壁にゑがけるしふの花——
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)