よば)” の例文
錦木を娘の家の門に立てた東人とは別で、娘の家のまはりを、自身名と家とをよばうてとほる。此が「よばひ」でもあり「名告り」でもある。
最古日本の女性生活の根柢 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
我等なほ少しく先に進める時、マリアよ我等の爲に祈り給へとよばはりまたミケーレ、ピエル及び諸〻の聖徒よと喚ばはる聲を我は聞きたり 四九—五一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
にはかに人の騒立つるにおどろきて顔をあぐれば、座中ことごとくびを延べておのかたを眺め、声々に臭しとよばはるに、見れば、吾が羽織のはしは火中に落ちて黒煙くろけふりを起つるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「法律もし三蔵を殺す能わずんば、種臣これを殺さん」とよばわられた如きは、一方より観れば、極端なる旧思想の如く思われるけれども、また他方よりこれを観れば
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
太夫の手にもとどまらで、空にあや織る練磨れんまの手術、今じゃ今じゃと、木戸番は濁声だみごえ高くよばわりつつ、外面おもての幕を引きげたるとき、演芸中の太夫はふとかたに眼をりたりしに
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
錦木を娘の家の門に立てた東人あずまびととは別で、娘の家のまわりを、自身名と家とをよばうてとおる。これが「よばひ」でもあり「名告なのり」でもある。
最古日本の女性生活の根柢 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
はげしく物思ひてねざりし夜の明方近く疲睡を催せし貫一は、新緑の雨に暗き七時のねやおそはるる夢の苦くしきりうめきしを、老婢ろうひよばれて、覚めたりと知りつつうつつならず又睡りけるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
また前に草案中の外国に関する箇条はことごとく削除したることも知りおられたるをもって、慨嘆して「法律もし三蔵を殺すこと能わずんば種臣彼を殺さん」とよばわられたとのことである。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
京都においては、罪人を洛中洛外に引廻す際に、とがの次第を幟に書き記した上に、そのとがをば高声によばわり、また通り筋の家々にては、暖簾のれんをはずして、平伏してこれを見るのが例であった。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)