唐織からおり)” の例文
まず厨子ずしの本尊仏をかつぎだし、燭台経机きょうづくえの類をはじめ、唐織からおりとばり螺鈿らでんの卓、えいの香炉、経櫃きょうびつなど、ゆか一所ひととこに運び集める。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんちりめんへ雨雲を浅黄あさぎ淡鼠ねずみで出して、稲妻を白く抜いたひとえに、白茶しらちゃ唐織からおり甲斐かいくちにキュッと締めて、単衣ひとえには水色みずいろ太白たいはくの糸で袖口の下をブツブツかがり
……実はこちらにつ前にちょっと人伝てに聞いた話では、何でも、やはりまちの小路あたりで大納言様の囲い者になっているらしく、まあ、きらびやかな唐織からおりの着物でも着せられて
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
白茶地しらちやぢ金糸きんしの多い色紙形しきしがた唐織からおりの帯もまばゆ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ふたりは、そう解して、悲涙にくれたが、於松はすこしも頓着とんちゃくなく、白装束を着て、その上に、それだけは華やかな赤地錦あかじにしきの陣羽織に、唐織からおりはかまをはいた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
唐織からおりの帯の落着く季節
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
唐織からおり十反、そのほか品々のご註文があったので、よろこんでお納めすると、その代金じゃといって、楮幣ちょへいとやらいうひょんなさつたばを手代にわたしてよこしたではございませんか。
と、高時は着ていた唐織からおりの羽織をって投げ与えた。その上、手ずから杯をやって。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「楮幣にかぎる、物と物との交易も相ならず、というんだそうだよ。——市でも近ごろ見なくなった舶載はくさいの上茶だの、糸、朱粉、薬種、香料、唐織からおり、欲しい物だらけだというんだが」
唐織からおりぬのを垂れた一方の几帳きちょうが揺れて、そのかげに、もすそだけを重ね合ってひそんでいた幾人もの女房たちが、こらえきれなくなったように、一人がくすりと洩らすと、それをはずみに、いちどに
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
有難味も真の値打ねうちも……。よろしい、こん夜ここでの楮幣は、明日、わしの佐女牛の屋敷へ持参せい。——わが家の倉にある伽羅きゃら、油、そうの薬、白粉、唐織からおり、珠、釵子かざし、欲しい物と交易こうえきしてやる。