古金襴こきんらん)” の例文
それは、色褪いろあせた古金襴こきんらんの袋に入っている。糸はつづれ、ひも千断ちぎれているが、古雅こがなにおいと共に、中の笛までが、ゆかしくしのばれる。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その抽出ひきだしの一つに古金襴こきんらんきれがはいってた、客があったので見せるために、旦那がそいつを出してみると、古代箔こだいはく白地金襴の切が一枚なくなっていたんだ」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
左膳は手早く壺にすがりをかぶせ、古金襴こきんらんの布にくるみ、箱に入れて、風呂敷につつみました。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこのたなの上にあるきりの小箱から発する異香のかおりでしたから、もう以下は説明の要がないくらいで、案の定それなる桐の外箱の中には、南蛮渡りの古金襴こきんらんに包まれて
つうじければ山内先生の御出とならば自身に出迎でむかうべしと何か下心したごころのある天忠が出來いできた行粧ぎやうさう徒士かち二人を先立自身はむらさきの法衣ころも古金襴こきんらん袈裟けさかけかしらには帽子ばうしを戴き右の手に中啓ちうけい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まづ此方こちらへと、鑑定めきゝをしてもらつもりで、自慢じまん掛物かけもの松花堂しやうくわだう醋吸すすひせいを見せるだらう、掛物かけものだ、箱書はこがき小堀こぼりごんらうで、仕立したてたしかつたよ、天地てんち唐物緞子からものどんすなか白茶地しらちやぢ古金襴こきんらんで。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そういって、ふと、彼女の帯の間から、見えている古金襴こきんらんの袋をじっと見つめ——
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)