古畳ふるだたみ)” の例文
旧字:古疊
三坪程の木小屋に古畳ふるだたみを敷いて、眼の少し下ってあぶらぎったおかみは、例の如くだらしなく胸を開けはだけ、おはぐろのげた歯を桃色のはぐきまで見せて
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あまりの不憫ふびんさに無常を感じ、法体となって名を蔵主ぞうすと改めたと見しは夢、まことは野原の妖狐にあべこべに化かされて、酒菰さかごも古畳ふるだたみ袈裟けさころもだと思っていたという筋である。
仇討たれ戯作 (新字新仮名) / 林不忘(著)
小学校を出るとすぐ、多分その年の夏時分だったろう、祖母は裏の物置小屋の土間に松丸太まつまるたかなんかで床をつくり、その上に二、三枚の古畳ふるだたみを敷いて、それを私の部屋にあてがった。
顔容かおかたちすぐれて清らかな少年で、土間どま草鞋穿わらじばきあしを投げて、英国政府が王冠章の刻印ごくいん打つたる、ポネヒル二連発銃の、銃身は月の如く、銃孔じゅうこうは星の如きを、ななめ古畳ふるだたみの上に差置さしおいたが、う聞くうち
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
腐れかけた麦藁屋根むぎわらやね、ぼろ/\くずれ落ちる荒壁、小供の尿いばりみた古畳ふるだたみが六枚、茶色にすすけた破れ唐紙が二枚、はえたまごのへばりついた六畳一間の天井と、土間の崩れた一つへっついと、糞壺くそつぼの糞と
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
りんと言ふと、畚を取つて身構へた。向へる壁のすすやれめも、はや、ほの明るく映さるゝそのたゞ中へ、たもとを払つてパツと投げた。は一面に白く光つた、古畳ふるだたみの目はひとびとつ針を植ゑたやうである。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)