テエブル)” の例文
朝は十三四人の看護婦の人達が大きな事務室のテエブルを囲うて、環円をえがいて立ち、その日の仕事の受持を婦長から割り当てられていた。
そこで自分は椅子いすをずらせて、違った位置からまた鏡をのぞきこんだ。すると果してそのテエブルの上には、読本らしいものが一冊開いてある。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小春の空が快く晴れて、誰も彼も出歩く頃になっても、秀麿はこのしんとした所に籠って、テエブルの傍を離れずに本を読んでいる。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
矢張り誰もゐない 私はこはごは一つのテエブルの傍に腰を下ろしながらその匂を搜す……私はそのとき始めて
鳥料理:A Parody (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
このきずだらけのテエブルの上へ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いや、まだそのほかにも、大理石のテエブルが見えた。大きな針葉樹の鉢も見えた。天井から下った電燈も見えた。大形な陶器の瓦斯煖炉ガスだんろも見えた。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
綾小路は椅背きはいに手を掛けたが、すぐに据わらずに、あたりを見廻して、テエブルの上にゆうべから開けたままになっている、厚い、仮綴かりとじの洋書に目を着けた。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
テエブルの上にコップと水を頼んで置かなくちゃね。お話に詰ったら、おひやをあがるがいいわ。たすかるわよ。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
中にはマホガニイ製の小さなテエブルが五つ六つ一種雅致のある亂雜さで配置されてゐる
鳥料理:A Parody (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
正月のテエブル
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
テエブルの上には置きランプが、うす暗い光を放つてゐた。その光は部屋の中を明くすると云ふよりも、むしろ一層陰欝な効果を与へるのに力があつた。
南京の基督 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
赤羽で駅員が一人這入って来て、テエブルの上に備えてある煎茶の湯にさわって見て、出て行った。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
中にはマホガニイ製の小さなテエブルが五つ六つ一種風致のある乱雑さで配置されている
鳥料理 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
立原は自分の部屋の構造を家の娘に画いて来た手紙には、椅子は緑色に、テエブルはココア色に、窓はセピア色にというふうに、色鉛筆をさまざまにつかい分けて、子供の鉛筆画のように描き上げてあった。
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
今夜も彼女はこのテエブルつて、長い間ぼんやり坐つてゐた。が、不相変あひかはらず彼女の部屋へは、客の来るけはひも見えなかつた。
南京の基督 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
中央に据えてあるテエブルわきに、一人の夫人が立っている。年はもう五十を余程越しているが、純一の目には四十位にしか見えない。地味ではあるが、身の廻りは立派にしているように思われた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
矢張り誰もいない 私はこわごわ一つのテエブルの傍に腰を下ろしながら
鳥料理 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
客間ザラの壁には先祖の肖像画が、何枚も壁に並んでゐる、——その肖像画の一つの下に、トルストイはテエブルへ向ひながら、郵便物に眼を通してゐた。
山鴫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その一人のヴェランダに近いテエブルの処まで附いて来たのに、食事をあつらえた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その部屋の中には古い穴だらけのテエブルが一つあるきりだつた
鳥料理:A Parody (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
南京ナンキン奇望街きばうがいの或家の一間には、色のあをざめた支那の少女が一人、古びたテエブルの上に頬杖をついて、盆に入れた西瓜すゐくわの種を退屈さうに噛み破つてゐた。
南京の基督 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
日光が色々に邪魔をする物のある秀麿のへやを、物見高い心から、依怙地えこじに覗こうとするように、窓帷まどかけのへりや書棚のふちを彩って、テエブルの上に幅の広い、明るい帯をなして、インクつぼを光らせたり
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その部屋の中には古い穴だらけのテエブルが一つあるきりだった
鳥料理 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
自分はまるで誰かにあざむかれたような、寂しい心もちを味いながら、壁にはめこんだ鏡の前の、テエブルへ行って腰を下した。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
トウルゲネフはやむを得ず、手近の椅子を一つ引き寄せると、これもやはり無言の儘、テエブルの上の新聞を読み始めた。
山鴫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
トウルゲネフはやつと身を起すと、白髪しらがの頭を振りながら、静に書斎の中を歩き出した。小さなテエブルの上の蝋燭の火は、彼が行つたり来たりする度に、壁へ映つた彼の影を大小さまざまに変化させた。
山鴫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)