半帕ハンケチ)” の例文
裏の物干しには、笹村が押入れにつくねておいた夏襯衣なつシャツ半帕ハンケチ寝衣ねまきなどが、片端から洗われて、風のない静かな朝の日光にさらされていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「あの、ざぶざぶ、冷水で、この半帕ハンケチを絞って下さいませんか。御無心ですが。私ね、実は、その町の曲角で、飛んだ気味の悪い事がありましてね。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
半帕ハンケチを眼に当てて大びらに泣き出した。喰い縛る歯が鋭くきしった、往来の人は足を停めだした。彼は最早堪え切れなくなったと同時に、此女が万引をしたのでは無いと信じだした。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
この出血の工合ではよほどの重傷を負うているに相違ちがいないが、どこに傷口があるのかはよく分らなかった、多分左の肩辺りらしいので、とにかくそこへ自分の半帕ハンケチをふわりとかけてやった。
黒猫十三 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
若い女房が顔を見ると、いま小刻みに、長襦袢ながじゅばんの色か、下着の褄か、はらはらと散りつつ急いで入った、息づかいが胸に動いて、頬の半帕ハンケチが少し揺れて
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
半帕ハンケチ屋根やねなゝめに、やまへかゝつてさつなびいた。「模樣もやうでは大丈夫だいぢやうぶです。」わたしうれしかつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、すぐに糸七が腰かけた縁端えんばなへ、袖摺れに、色香折敷くかがみ腰で、手に水色の半帕ハンケチを。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おなじ半帕ハンケチでも、金澤かなざは貸本屋かしほんや若妻わかづまふのが、店口みせぐち暖簾のれんかたけた半身はんしんで、でれりとすわつて、いつも半帕ハンケチくちくはへて、うつむいてせたは、永洗えいせん口繪くちゑ艷冶えんやてい眞似まね
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)