くわわ)” の例文
権太夫の長男太郎長俊ながとしと次子次郎長世ながよとは承久しょうきゅうの乱に京方の供をなして討死うちじにし、三子四郎兵衛尉宗俊ひょうえのじょうむねとしは同じ合戦に関東方にくわわった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
桃吉が資産家になり、権力がくわわってゆくと共に、今は爵位を子息にゆずって、無位無官の身となった具張氏は居愁いづらい身となってしまった。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
まったく彼岸中にこれほどの雪を見るのは近年めずらしいことで、天は暗く、地は白く、風も少し吹きくわわって、大綿小綿が一面にみだれて渦巻いている。
雪の一日 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
家庭の経済的責任を男子に委ねて、その従属者として生活しているのでなくて、女子もこれにくわわり、相本位的に独立の主体として解釈している結果である
ただ詩その物の価値は思想や材料やのそれに存するのではなく、ある種の思想材料に作者の技能がくわわった作物の成功それに存するものと信じて居るのです
子規と和歌 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
美妙は実に純文学を代表して耆宿きしゅく依田百川よだひゃくせんと共に最始の少数集団にくわわっていたので、白面の書生が白髯の翁と並び推された当時の美妙の人気を知るべきである。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
夫婦が出来た以前アダムは天なる父とただ二人でいたがイブが出来てからは友達が一人くわわって二本立のものとなった。要するに道徳の元は父に対する孝である。夫婦のためには友である。
イエスキリストの友誼 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼の勧説にしたがって、この夜廻にくわわった事を、益々ますます悔んでいる様に見えた。
遺産 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
まだ布哇はわいの伯母のいえに、寄寓きぐうしていた頃、それはあたかも南北戦争の当時なので、伯母の息子すなわちその男には従兄に当たる青年も、その時自ら軍隊にくわわって、義勇兵として戦場に臨んだのであった。
感応 (新字新仮名) / 岩村透(著)
わたくしはここに鷲津知事に随行した人々の中に婢妾ひしょうしげと呼ばれた女のくわわっていた事を書添えて置かなければならない。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あの晩あの雨に品川しながわまで送らせまつり、お帰りの時刻には吹きぶり一層くわわり候やうなりしに、ことにうすら寒き夜を、どうして渋谷しぶやまで着き給ひし事かと案じ/\致し候ひし。
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
浅草橋もあとになし須田町すだちょうに来掛る程に雷光すさまじく街上に閃きて雷鳴止まず雨には風もくわわりて乾坤けんこんいよいよ暗澹たりしが九段を上り半蔵門に至るに及んで空初めて晴る。
夕立 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかし昔から現代に到るまでの間にはこの外いろいろの原因がくわわっている。
私娼の撲滅について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
神代帚葉翁こうじろそうようおうが生きていた頃には毎夜欠かさぬ銀座の夜涼みも、一夜いちやごとに興味のくわわるほどであったのが、其人も既に世を去り、街頭の夜色にも、わたくしはもう飽果あきはてたような心持になっている。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)