割目われめ)” の例文
空気中での長い稲妻形の火花の写真を千枚以上も撮って、その空間における屈曲の角度の統計的研究は、「空気の割目われめ」の説となったりした。
指導者としての寺田先生 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
にんじんは、爪で地べたをこすり、汚れた水に、こっちへ流れてこいという合図をし、深い石の割目われめを教えてやる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
その石の割目われめには、色々のものが挟まっておるが、あるものはピンと突立つったち、あるものはまだ動いている。
不周山 (新字新仮名) / 魯迅(著)
枕元に一間いっけんの出窓がある。その雨戸の割目われめから日の光が磨硝子すりガラスの障子に幾筋いくすじも細く糸のようにさし込んでいる。兼太郎は雨だれのひびきは雨が降っているのではない。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大きな割目われめが端から端まで出来たりしたら、その勇士はどんなに面目ない気がするでしょう!
夏草の茂った中に、高さはただ草をいて二三尺ばかりだけれども、広さおよそ畳を数えて十五畳はあろう、深い割目われめが地の下にとおって、もう一つ八畳ばかりなのと二枚ある。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こちらの急斜面には足場になるようないかなる割目われめ凸起ボッシュもないからである。以前山案内人ガイドの経験をもつ山口が先頭に立った。われわれの胴中をロープで結びあわして導いていった。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
あれ、柱の割目われめにも
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ひそかにおもふ。みづうみ全景ぜんけいは、月宮げつきうよりして、みきむらさきみどりなる、たまえだより、金色こんじきをのつてなげうつたる、おほいなる胡桃くるみの、割目われめあをつゆたゝへたのであらう。まつたく一寸ちよつと胡桃くるみる。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)