めへ)” の例文
兄貴が亡くなる、おめへがやつて来る。葬式おじやんぼんを出す、御苦労招びから、礼廻りと、丁度今日で六日目だ。あゝ、明日は最早もう初七日だ。日数の早くつには魂消たまげて了ふ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「だつて、そのくれゐあためへだア。お前さアばか、勝手な真似して、うらとがめられるせきはねえだ」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
明けてくんなとつて、わたし医者いしやぢやアなし、そんな無理なことをつたツてわたしがおめへあけわけにはいかないが、苦しい時の神頼かみだのみてえ事も有るから、二人で信心しん/″\をして、一生懸命になつたら
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おめへは何だ? 何処のもんだ? 此様こんな帽子を誰にこせへて貰つた?」
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
『これ、丑松や、猪子といふ御客さんがおめへを尋ねて来たぞい。』う言つて叔母は駈寄つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『省吾や。おめへはまあ幾歳いくつに成つたら御手伝ひする積りだよ。』と言ふ細君の声は手に取るやうに聞えた。省吾は継母をおそれるといふ様子して、おづ/\と其前に立つたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)