前額ぜんがく)” の例文
「……前額ぜんがくの中央に弾痕のある点ピストルの落ちていた位置などもって見るも自殺とは考えられぬ、其筋そのすじでは他殺の見込みを以て、已に犯人捜索に着手した」
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
エルマン氏は、禿げ上つた前額ぜんがくみ出る汗を無雑作に手帛ハンカチで拭きとりながら、ぶつきらぼうに答へた。
もう一度、その婦人と、ひどい争いをした。婦人は、またピストルを撃った。そして今度は、彼の前額ぜんがくを僅かに傷つけた。すると、とたんに、彼の記憶が戻った。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
無論むろん偶然ぐうぜん符合ふがふではありますまい。』とわたくし感嘆かんたんさけびきんなかつた。武村兵曹たけむらへいそう前額ぜんがくでゝ
和尚はすこし首をかがめて夫人の唇を己のほおに受けようとした。と、李張の手にした矢が飛んでその前額ぜんがくから後脳こうのうにかけてつらぬいた。夫人の倒れた上に血にんだ和尚おしょうの体が重なった。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
はるかの木工場からむせんで来る旋回円鋸機せんかいえんきょきの悲鳴は、首筋から耳の付け根を伝わって、頭髪の一本一本ごとみ込んで震える。あの音も数本の指と、腕と、人の若者の前額ぜんがくを斬り割いた。
怪夢 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
とその従兄いとこの民謡詩人がツルリと禿上はげあがったその前額ぜんがくを指で弾く。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
と、アンは、前額ぜんがくのすこし左へよったところを指し
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)