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前立
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まえだて
ふりがな文庫
“
前立
(
まえだて
)” の例文
そこで馬を返そうとすると、既に敵の重囲の中であるから、朱の
前立
(
まえだて
)
を見て、音に聞えた山県ぞ、打洩すなと許り押し寄せて来る。
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
けれどもこの兜には
前立
(
まえだて
)
がないのです。
柄
(
つか
)
が残っているので、前立は何んであるかと
詮索
(
せんさく
)
をして見ると、これは
独鈷
(
とっこ
)
であるということです。
幕末維新懐古談:68 楠公銅像の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
柿色の顔と
萌黄色
(
もえぎいろ
)
の衣装の配合も特殊な感じを与える。頭に冠った
鳥冠
(
とりかぶと
)
の額に、
前立
(
まえだて
)
のように着けた鳥の頭部のようなものも不思議な感じを高めた。
雑記(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
けれども
兜
(
かぶと
)
の
前立
(
まえだて
)
のきらきらする
星
(
ほし
)
の
光
(
ひかり
)
におじけて、ただ口から火を
吹
(
ふ
)
くばかりで、そばへ
近寄
(
ちかよ
)
ることができません。
大江山
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
この宝物こそ——伊達家秘宝の一つ、三宝荒神の
前立
(
まえだて
)
のある上杉謙信公の兜だったというものもあります。いやいや楠木正成卿の兜だというものもあります。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
前立
(
まえだて
)
打ったる
冑
(
かぶと
)
を冠り、白糸
縅
(
おどし
)
の大鎧を着、
薙刀
(
なぎなた
)
を
抱
(
か
)
い込んだ馬上の武士——それこそ地丸左陣である。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
また、
兜
(
かぶと
)
の
前立
(
まえだて
)
だとか鎧の金具なども、朝陽に
映
(
は
)
えて、どうかすると、星雲のように煙った。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
前述の如くそれには水牛の
抱角
(
だきづの
)
の脇立があるのだが、その外に尚前方
鍬形台
(
くわがただい
)
の所に、鬼を
蹈
(
ふ
)
まえた
帝釈天
(
たいしゃくてん
)
の
前立
(
まえだて
)
が附いている。次にその鎧の一部が南蛮胴であることも、何となく異常な感を起させる。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お雪は、ついに鎧櫃にしがみついて見ると、これは透かし物のような鎧櫃の
前立
(
まえだて
)
の文字に、ありありと
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今日でも
骨身
(
ほねみ
)
に
滲
(
し
)
みるようにその時心配をした事を記憶しておりますが、実は、聖上御覧の間に、楠公の甲の
鍬形
(
くわがた
)
と鍬形との間にある
前立
(
まえだて
)
の剣が、風のために揺れて
幕末維新懐古談:70 木彫の楠公を天覧に供えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
黄金
(
こがね
)
作りの武田
菱
(
びし
)
の
前立
(
まえだて
)
打ったる兜をいただき、黒糸に緋を打ちまぜて
縅
(
おど
)
した鎧を着、紺地の
母衣
(
ほろ
)
に金にて経文を書いたのを負い、
鹿毛
(
かげ
)
の馬に
跨
(
またが
)
り采配を振って激励したが
川中島合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
なぜならば、伝右衛門が、戦場に出るときは、常に
兜
(
かぶと
)
の
前立
(
まえだて
)
にも、その旗さし物にも、将棋の駒の「
香車
(
きょうしゃ
)
」を印としているほどな勇士であることを、誰も知っているからだった。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
義元もまた、前へのめって、兜の
前立
(
まえだて
)
で地を打った。その顔を上げたかと見えた途端
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
郎党たちは、そう分っているだけに、何と慰めることばも知らず、黙々と、
黒桃花
(
くろつきげ
)
の尾や馬蹄に
煙
(
けぶ
)
る
粉雪
(
こなゆき
)
の
旋風
(
つむじかぜ
)
に、
兜
(
かぶと
)
の
前立
(
まえだて
)
をうつ向けがちに従って行ったが、そのうちに一ノ郎党、鎌田兵衛正清が
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
兜
(
かぶと
)
も、
古鉄
(
ふるがね
)
の地味な物で、
前立
(
まえだて
)
に日月が輝いているきりだった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
前
常用漢字
小2
部首:⼑
9画
立
常用漢字
小1
部首:⽴
5画
“前立”で始まる語句
前立星