切火きりび)” の例文
刻苦勉励、学問をもつかまつり、新しき神道を相学び、精進潔斎しょうじんけっさい朝夕あさゆう供物くもつに、魂の切火きりび打って、御前みまえにかしずき奉る……
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この裏家うちから高褄たかづまをとって、切火きりびをかけられて出てゆく芸妓姿はうけとれなかったが、毎日細二子ほそふたこ位な木綿ものを着て、以前もとの抱えられた芸妓屋うちへゆき
「あの婆は人間じゃねえ。嘘だと思ったら、横っ腹を見ろ。魚のうろこが生えてやがるじゃねえか。」とかで、往来でお島婆さんに遇ったと云っても、すぐに切火きりびを打ったり
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と、かどを踏み出す四名の背なかへ、乾児のひとりが、カチカチと切火きりびった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下足札げそくふだそろへてがらんがらんのおともいそがしや夕暮ゆふぐれより羽織はおりひきかけて立出たちいづれば、うしろに切火きりびうちかくる女房にようぼうかほもこれが見納みおさめか十にんぎりの側杖そばづえ無理情死むりしんぢうのしそこね、うらみはかゝるのはてあやふく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
下足札そろへてがらんがらんの音もいそがしや夕暮より羽織引かけて立出たちいづれば、うしろに切火きりび打かくる女房の顔もこれが見納めか十人ぎりの側杖そばづえ無理情死しんぢうのしそこね、恨みはかかる身のはて危ふく
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)