出這入ではいり)” の例文
勝山かつやまに結ったり文金の高島田に結ったりしている上、それで芝居に出這入ではいりするようになってからは、随分意気な身装みなりをしていたから町家の奥様とも見えれば
ある恋の話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
三「相手が甚藏だから其の位の事は云うに違いない、よろしい、其の代り、土手の甚藏が親類のような気になって出這入ではいりされては困るから、甚藏とは縁切えんきりで貰おう」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そののちだいぶ金が子を生んでからは、末造も料理屋へ出這入ではいりすることがあったが、これはおお勢の寄り合う時に限っていて、自分だけが客になって行くのではなかった。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
これがめかけかけにしたのではなし正當しようたうにも正當しようとうにもひやくまんだらたのみによこしてもらつてつたよめおや大威張おほゐばり出這入ではいりしてもさしつかへはけれど、彼方あちら立派りつぱにやつてるに
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
如何いかんとなれば江戸演劇は三絃さんげんを主とする音楽なくしては決して成立するものにあらず。出這入ではいりうた合方あいかたは俳優が演技の情趣を助け床の浄瑠璃は台詞せりふのいひつくし能はざる感情を説明す。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いろいろな人の出這入ではいりが珍しいのです。日蔭に植えた低いひのきがあるので、外からは見えません。首を伸ばせば時計台は真正面です。その時計は大きなもので、五尺あるとか聞きました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
曳舟ひきふねの通りが田圃を隔てて見えるほど奥まった家なのですから、私の学校へも遠くなるし、来る病人も困るだろうから、今少し出這入ではいりのよい場所を探したらと止めてもお聴きにならないで
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
大威張に出這入ではいりしても差つかへは無けれど、彼方あちらが立派にやつてゐるに、此方がこの通りつまらぬ活計くらしをしてゐれば、御前の縁にすがつてむこ助力たすけを受けもするかと他人様ひとさま処思おもはく口惜くちをしく
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)