冷水ひやみず)” の例文
ヒトミはもちろん東助も、頭から冷水ひやみずをぶっかけられたように、ぞおーッとして、左右からポーデル博士にすがりついた。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それでも若旦那の勘平がほんとうに腹を切って、血だらけになって楽屋へかつぎ込まれた時には、わたしも総身に冷水ひやみずを浴びせられたようにぞっとした。
勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おお、つめてえ。老人としより冷水ひやみずたまったもんじゃねえ。」とつぶやきつつ、打仰ぎて一目見るより、ひええ! とって飛退とびすさり、下駄を脱ぎて、手に持ちはしたれども
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
冷たい風がほおでて、竦然ぞっ襟元えりもとから、冷水ひやみずでもブチカケられたように……スウッと誰かが入って来たと思った瞬間、こらえ怺えていた恐怖が一時に爆発して
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
よせばいいのに老人としより冷水ひやみずで、毎朝三百棒を振るので、その無理がたたり、この時、腸捻転を起しかけていたのである。いよいよドタン場になって、しぶしぶ按摩を呼ばせた。
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
彼奴きゃつ、としよりの冷水ひやみずで、鼓賊を追っかけているんだよ。ところがさすがの名探索も、こんどばかりは荷が勝って、後手ばかり食らっているやつさ。それを俺は知ってるんだ。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わが子の愛をおぼし給わば、益なき妄動もうどうをやめ給え。年寄の冷水ひやみず、夢、妄動をやめたまえ。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冷水ひやみずで洗ったような清潔きれいな腹をもって居ると他にも云われ自分でも常々云うていたおまえが、今日に限って何という煮えきれない分別、女の妾から見ても意地の足らないぐずぐず思案
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
下草や小藪こやぶを踏み分ける音がもうすぐ後ろで聞こえる、僕の身体からだ冷水ひやみずを浴びたようになって、すくんで来る、それでわきの下からは汗がだらだら流れる、何のことはない一種の拷問サ。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
だが、私が松の木の上にいる父を、老人としより冷水ひやみずだとよびにゆくと、小さな声で
湯煮ゆだった時その豆を冷水ひやみずの中へ入れて洗うのが秘伝だそうです。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
さながら襟下えりもとから冷水ひやみずびせられたようにかんじた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
守青年は冷水ひやみずをあびせられた様な感じがした。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
というのはのぼる時は少も気がつかなかったが路傍みちばたにある木の枝から人がぶら下っていたことです。驚きましたねエ、僕は頭から冷水ひやみずをかけられたように感じて、其所そこに突立って了いました。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
と、暑い日に、一杯の冷水ひやみずでものんだような顔をしたという事であった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)