あぐ)” の例文
待ちあぐんで引返してきたのだと声高に述べたてていたが、真一の突然の死をお手伝いさんから聞くと、驚いて離座敷に駈けつけてきた。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ます々怪しいけれど、兎に角此の世に、此の時計の捲き方を知る人の有るは、調べあぐんで居た余の叔父に取っては非常の好都合に違い無い
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
にこにことほほえみながら近づいて来るのは、なんとなんと! 今の今まで、一日一杯私が探して探して探しあぐねていた、ジーナとスパセニアだったのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
なお帰らねば廃嫡はいちゃくせんなど、種々の難題を持ち出せしかど、財産のために我が抱負ほうふ理想をぐべきにあらずとて、彼はうべな気色けしきだになければ、さしもの両親もあぐみ果てて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
斯して鬪ひの上に更に鬪ひ、鬪ひの上に更に鬪ひをして、吾が心はあぐね果てるまで健鬪した。
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
やゝ待ちあぐみたる会員は急霰きふさんの如き拍手をもつて温厚なる浦和議長を迎へたり、議長はおもむろに開会の辞を宣して、今や書記をして今夜の議案を朗読せしめんとする時「議長ツ」と
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
私は煙草を三本も四本も飲んでから、待ちあぐんで戸外へ出た。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
と独り喋りあぐんだ妙子さんが袂を引いた時、おもむろに身を起して
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
知りて付込れなば如何なる變事へんじの出來んも知れずいづれにも又々明日馬喰町へ行きて尋ね當り次第市之丞へ渡す迄ははなはだ以て心遣ひなりと云に女房も御道理ごもつともなり今日は終日ひねもす尋ねあぐまれさぞかし御勞おつかれならんにより貴郎あなたよひうち御臥おやすみありて夜陰よはよりは御心だけもねむり給は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その解けぬなぞを考えあぐねながら、私はいつまでもいつまでも薄暗うすやみの中に突っ立っていました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
勿論、いくら思いあぐね考え倦ねてみても、どうしても思い当るところはないのです。ただこんな思い設けぬ、重大事が突発した以上、もう帰京する気には、どうしてもなれません。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)