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例刻
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れいこく
宗助は
例刻に
歸つて
來た。
神田の
通りで、
門並旗を
立てゝ、もう
暮の
賣出しを
始めた
事だの、
勸工場で
紅白の
幕を
張つて
樂隊に
景氣を
付けさしてゐる
事だのを
話した
末
其上乘客がみんな
平和な
顏をして、どれもこれも
悠たりと
落付いてゐる
樣に
見えた。
宗助は
腰を
掛けながら、
毎朝例刻に
先を
爭つて
席を
奪ひ
合ひながら、
丸の
内方面へ
向ふ
自分の
運命を
顧みた。