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五體
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ごたい
疾風の
如く
駈けて
來た
件の
狂人が、
脚から
宙で
飛乘らうとした
手が
外れると、づんと
鳴つて、
屋根より
高く、
火山の
岩の
如く
刎上げられて、
五體を
碎いた。
開きけるに皆々
漸次に
酩酊して前後を
失ふ程に
五體俄に
痿痺出せしも只醉の廻りしと思ひて
正體もなきに大膳等は
此體を見て時分は
宜と風上より我家に火を
其主人の
默つてますうちは、
私が
鉦たゝきに
五體を
震はす
時でした……
尤も、
坊主は、
唯ぼんやりと
鼠の
腰法衣でぶら/\と
前へ
立ちますばかり、
鉦は
些とも
鳴さなかつたつて
事でした……