乙姫様おとひめさま)” の例文
旧字:乙姫樣
五十過ぎて、たった一と粒種——それも龍宮の乙姫様おとひめさまのように美しい娘に死なれた、三河屋嘉兵衛かへえ夫婦の歎きは、見る目も哀れでした。
この豐玉姫様とよたまひめさまわれる御方おかたは、だい一の乙姫様おとひめさまとして竜宮界りゅうぐうかい代表だいひょうあそばされる、とうと御方おかただけに、矢張やはりどことなく貫禄おもみがございます。
とんと竜宮の田楽でんがくで、乙姫様おとひめさま洒落しゃれあねさんかぶりを遊ばそうという処、また一段のおもむきだろうが、わざとそれがために忍んでも出られまい。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
乙姫様おとひめさまの前に出たような気になって、穴の開く程その顔を見詰めていたよ、すると女子おなごは俺に気がいたように、俺の顔を見てにっと笑ったが、笑う拍子に赤い下唇が動いて
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ふんどしの浦島太郎が、乙姫様おとひめさまに会ひに行つちよる光景……と、ござアい!」
プールと犬 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
大げさに申しますれば、浦島太郎うらしまたろう乙姫様おとひめさま御寵愛ごちょうあいを受けたという龍宮りゅうぐう世界、あれでございますわ、今から考えますと、その時分の私は、本当に浦島太郎の様に幸福だったのでございますわ。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうしてしばしば乙姫様おとひめさまという美しい一人娘がいる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
イヤイヤあれはれいによりて人間にんげんどもの勝手かって仮構事つくりごとじゃ。乙姫様おとひめさまけっして魚族さかな親戚みうちでもなければまた人魚にんぎょ叔母様おばさまでもない……。
それからのわたくしえず竜宮界りゅうぐうかいこと乙姫様おとひめさまことばかりかんがむようになり、わたくし幽界生活ゆうかいせいかつひとつ大切たいせつなる転換期てんかんきとなりました。