久振ひさしぶ)” の例文
しかも僕の見た人形芝居は大抵たいてい小幡小平次こばたこへいじとかかさねとかいふ怪談物だつた。僕は近頃大阪へき、久振ひさしぶりに文楽ぶんらくを見物した。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今日は久振ひさしぶりで市街のある所へ出られる。三、四日山の中ばかり歩いていたので、人家のある所が懐しい。今日は益田川の岸を下って高山の町へ這入るのだ。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
私は、久振ひさしぶりに、飲み慣れない酒に酔ってしまって、それから以後のことを、よくおぼえていない。
「ほんとにお久振ひさしぶりですねえ、お變りも御在ませんの、お一人ですか。」とそつと四邊あたりを眺めた。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
あかりがつけられると思つてネ、よろづやへボツ/\いつて蝋燭らふそくちやう買つてネ、ぐ帰らうとするとよろづやの五郎兵衛ゴロベイどんが、おとめさん久振ひさしぶりだ一服吸つていきなつて愛想するから
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
久振ひさしぶりで不二雄さんの傍へ来て、つた一日で帰るのはどうも名残惜なごりおしいやうな、物足らないやうな心持が、おそらく継子さんの胸の奥に忍んでゐるのであらうと察しられます。
散々さんざん馳走を受けて、その帰りに馬に乗らないかとう。ソレは面白い、久振ひさしぶりだから乗ろうといって、その馬を借りてのって来た。艦長木村は江戸の旗本はたもとだから、馬に乗ることは上手じょうずだ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
同時に又明治時代にめぐり合つた或懐しみに近いものを感じないわけには行かなかつた。そこへ下流からいで来たのは久振ひさしぶりに見る五大力ごだいりきである。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ヒョイと浦賀の海岸で島にあって、イヤ誠にお久振ひさしぶり、時に何か日本にかわった事はないかと尋ねた所が、島安太郎が顔色かおいろを変えて、イヤあったとも/\大変な事が日本にあったと云うその時、私が
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
久振ひさしぶりに見る彼の笑顔だった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
僕は本所界隈ほんじよかいわいのことをスケツチしろといふ社命を受け、同じ社のO君と一しよに久振ひさしぶりに本所へ出かけて行つた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その時、私は新銭座に居ましたが、マア久振ひさしぶりで飲食を共にして、何処どこに居るかと聞けば、白銀台町しろかねだいまちそうなにがしう医者がある、その家は寺島の内君の里なので、その縁で曹の家にひそんで居ると云う。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)