丸裸体まるはだか)” の例文
それは可愛らしい、お河童かっぱさんの人形であった。丸裸体まるはだかのまま……どこをみつめているかわからないまま……ニッコリと笑っていた。
微笑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二俣ふたまたの奥、戸室とむろふもと、岩で城をいた山寺に、兇賊きょうぞくこもると知れて、まだ邏卒らそつといった時分、捕方とりかた多人数たにんず隠家かくれがを取巻いた時、表門の真只中まっただなかへ、その親仁おやじだと言います、六尺一つの丸裸体まるはだか
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
風当かぜあたりの強きゆゑか、何れも丸裸体まるはだかになつて、黄色に染つた葉の僅少わづかばかりが枝にしがみ着いて居るばかり、それすら見て居る内にバラ/\と散つて居る。風の加はると共に雨が降つて来た。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
死骸は猿股さるまた一つ切りで、丸裸体まるはだかなのだ。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そんな処で思いがけなく、奇妙な恰好をした丸裸体まるはだかの人間を一匹撃ち落したのですからね。……何ともいえない鬼気に迫られたのでしょう。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
水溜りに湧いたお玉杓子たまじゃくしでゲス。それがみんな丸裸体まるはだかの人間ばっかりなんですからいた口がふさがりませんや。相当に広い部屋でしたがね。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
丸裸体まるはだかとなって新しいメリヤスの襯衣シャツに着かえ、軍隊手袋と靴下を穿うがってサテ藁切庖丁を取出してみると、新しいですこしグラつくようである。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
やはり丸裸体まるはだかのまま、貧弱な十しょくの光りを背にして、自分の病棟付きの手洗場の片隅に、壁に向って突っ立っていた。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかもダンダン暗がりに慣れて来た眼でそいつ等の後姿を見ると、揃いも揃った赤い湯もじ一貫の丸裸体まるはだかで髪をオドロに振乱しているのには仰天した。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私の居る凹地を取り捲いた巨大な樹の幹に、一ツずつ丸裸体まるはだかの人間の死骸がくくりつけてあるのです。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そうして最早もはや、スッカリ原始生活に慣れ切っている久美子と、四人の子供達が、澄み切った真夏の太陽の下で、丸裸体まるはだかのまま遊びたわむれている姿を、そこいらのトド松の蔭から
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一個のルンペン屍体したいに過ぎなかったのです……しかも頭髪や鬚を、蓬々ぼうぼうやした原始人そのままの丸裸体まるはだかで、岩石のこすり傷や、川魚の突つき傷を、全身一面に浮き上らせたまま
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その上に、水のしたたるような高島田にうたオモヨさんの死骸が、丸裸体まるはだかにして仰向けに寝かしてありまして、その前に、母屋おもやの座敷に据えてありました古い経机きょうづくえが置いてあります。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その中で三人の頬ぺたの赤い看護婦たちが、三人とも揃いのマン丸い赤い腕と、赤い脚を高々とマクリ出すと、イキナリ私を引っ捉えてクルクルと丸裸体まるはだかにして、浴槽ゆぶねの中に追い込んだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
毎日毎日一度ずつ、芸当の小手調べとして親爺と揃いの金ピカの猿股を穿いた丸裸体まるはだかの吾輩が、オヤジの禿頭の上に逆立ちをする事になっていたんだが、そいつを毎日毎日繰返しているうちに
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
せこけた蒼白い若者……又、老人の左側には、花輪を戴いた乱髪の女性が、それぞれに丸裸体まるはだかのまま縛り付けられて、足の下に積み上げられた薪から燃え上る焔と煙に、むせび狂っている。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは若い女の丸裸体まるはだかの死体だったのです。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)