下目しため)” の例文
留守中るゐちうこれは失禮しつれいでした。さいませんので、女中ぢよちうばかり‥‥や、つまらんもの差上さしあげて恐縮きようしゆくしました』と花竦薑はならつきやう下目しためる。
だが、馬琴は出身の当初から京伝を敵手と見て競争していたので、群小作者を下目しために見ていても京伝の勝れた作才には一目置いていた。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
で、その尻上がりの「ですか」を饒舌しゃべって、時々じろじろと下目しために見越すのが、田舎漢いなかものだとあなどるなと言う態度の、それがあきらかに窓から見透みえすく。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
珠運しゅうん命の有らん限りは及ばぬ力の及ぶケを尽してせめては我がすきの心に満足さすべく、かつ石膏せっこう細工の鼻高き唐人とうじんめに下目しためで見られし鬱憤うっぷんの幾分をらすべしと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
下目しために、横っちょで結んだ算盤絞そろばんしぼりの白木綿しろもめんの三尺が、歩くたんびにやくざにねじれる。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
殊にお掛屋かけやの株を買って多年の心願の一端がかなってからは木剣、刺股さすまた袖搦そでがらみを玄関に飾って威儀堂々と構えて軒並のきなみの町家を下目しために見ていた。
眉の太い、いかばなのがあり、ひたいの広い、あごとがった、下目しためにらむようなのがあり、仰向あおむけざまになって、頬髯ほおひげの中へ、煙も出さず葉巻を突込つッこんでいるのがある。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
処でくも学士は二人切ふたりぎりだから他の候補者を下目しために見て暗に華尾君と競争してゐた。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)