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一封
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いつぷう
宗助は
一封の
紹介状を
懷にして
山門を
入つた。
彼はこれを
同僚の
知人の
某から
得た。
其同僚は
役所の
徃復に、
電車の
中で
洋服の
隱袋から
菜根譚を
出して
讀む
男であつた。
午飯に、けんちんを
食べて
吐いた。——
夏の
事だし、
先生の
令夫人が
心配をなすつて、お
實家方がお
醫師だから、
玉章を
頂いて
出向くと、
診察して、
打傾いて、
又一封の
返信を
授けられた。
旨く行けば結構だが、
遣り
損なへば益三千代の迷惑になる
許だとは代助も承知してゐたので、強ひて
左様しやうとも主張しかねた。三千代は又立つて
次の
間から
一封の書状を
持つて
来た。