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一刷毛
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ひとはけ
ふりがな文庫
“
一刷毛
(
ひとはけ
)” の例文
緑のスロープも、高地になるに随って明るく、陰影が
一刷毛
(
ひとはけ
)
に撫で下ろされた。
蘆
(
あし
)
の
叢
(
くさむら
)
の多い下の沢では、
葦切
(
よしき
)
りが
喧
(
やかま
)
しく
啼
(
な
)
いていた。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
それは浮浪人同様のもので、
月旦
(
げったん
)
の席へは上せられない。かりに上せられても、
一刷毛
(
ひとはけ
)
で片づいてしまう。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その上不思議な事にこの画家は、
蓊鬱
(
おううつ
)
たる草木を描きながら、
一刷毛
(
ひとはけ
)
も緑の色を使っていない。
蘆
(
あし
)
や
白楊
(
ポプラア
)
や
無花果
(
いちじゅく
)
を
彩
(
いろど
)
るものは、どこを見ても濁った
黄色
(
きいろ
)
である。
沼地
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大きな空が
一刷毛
(
ひとはけ
)
でぼかされて居た。彼は月をつくづくと見上げた。さうして歩いた。遠い水車の音が、コツトン、コツトン、コツトン、と野面を渡つてひびいて来た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
夕方は、まんまるな
紅
(
あか
)
い日が、まんじりともせず
悠々
(
ゆうゆう
)
と西に落ちて行く。
横雲
(
よこぐも
)
が一寸
一刷毛
(
ひとはけ
)
日の真中を横に
抹
(
なす
)
って、画にして見せる。
最早
(
もう
)
穂
(
ほ
)
を
孕
(
はら
)
んだ
青麦
(
あおむぎ
)
が夕風にそよぐ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
色は
一刷毛
(
ひとはけ
)
の
紺青
(
こんじょう
)
を平らに流したる所々に、しろかねの
細鱗
(
さいりん
)
を畳んで
濃
(
こま
)
やかに動いている。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
はげて、くすんだ、泥絵具で
一刷毛
(
ひとはけ
)
なすりつけた、波の線が太いから、海を
被
(
かつ
)
いだには違いない。……鮹かと思うと脚が見えぬ、
鰈
(
かれい
)
、
比目魚
(
ひらめ
)
には、どんよりと色が赤い。
赤鱏
(
あかえい
)
だ。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わっしはミトレイと二人で、いちんち八時ごろまで仕事をして、帰りじたくをしておりますと、ミトレイのやつがいきなりわっしの面へ、ペンキをさっと
一刷毛
(
ひとはけ
)
なすりつけました。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
つい鼻先の柳の樹をさっと
一刷毛
(
ひとはけ
)
薄墨にぼかしてしまう。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
兎に角、
垂死
(
すゐし
)
の芭蕉の顔に、云ひやうのない不快を感じた其角は、
殆
(
ほとんど
)
何の悲しみもなく、その紫がかつたうすい唇に、
一刷毛
(
ひとはけ
)
の水を塗るや否や、顔をしかめて引き下つた。
枯野抄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それも丹念に塗りたくって、根気任せに
錬
(
ね
)
り上げた眼玉ではない。
一刷毛
(
ひとはけ
)
に輪廓を
描
(
えが
)
いて、眉と
睫
(
まつげ
)
の間に自然の影が出来る。
下瞼
(
したまぶた
)
の
垂味
(
たるみ
)
が見える。取る年が集って目尻を引張る波足が浮く。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
刷
常用漢字
小4
部首:⼑
8画
毛
常用漢字
小2
部首:⽑
4画
“一刷”で始まる語句
一刷
一刷新