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つりぶねさう
雛菊、
釣舟草、
莧の花、もつと眞劍の
迷はしよりも、おまへたちの方がわたしは好だ。
滅んだ花よ、むかしの花よ。
車の
左右に
手の
届く、
数々の
瀧の
面も、
裏見る
姿も、
燈籠の
灯に
見て、
釣舟草は
浮いて
行く。
やがて、
川の
幅一
杯に、
森々、
淙々として、
却つて、また
音もなく
落つる
銚子口の
大瀧の
上を
渡つた
時は、
雲もまた
晴れて、
紫陽花の
影を
空に、
釣舟草に、ゆら/\と
乗心地も
夢かと
思ふ。
釣舟草、
不謹愼の女である、
秋波をする、
科をする。
巌の
黒き
時、
松明は
幻に
照し、
瀬の
白き
時、
釣舟草は
窓に
揺れた。