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じようかくら
恰も
加能丸の
滅亡を
宣告せむとて、
惡魔の
遣はしたる
使者としも
見えたりけむ、
乘客等は二
人三
人、
彼方此方に
額を
鳩めて
呶々しつゝ、
時々法華僧を
流眄に
懸けたり。
と
渠は
獨り
頷きつゝ、
從容として
立上り、
甲板の
欄干に
凭りて、
犇き
合へる
乘客等を
顧みて
如何となれば、
乘客等は
爾く
身を
殺して
仁を
爲さむとせし、
此大聖人の
徳の
宏大なる、
天は
其の
報酬として
渠に
水難を
與ふべき
理由のあらざるを
斷じ、
恁る
聖僧と
與にある
者は、
此結縁に
因りて